固有名詞に注意
スポーツの通訳をする場合、ルールやプレー中に発生する表現や用語に気を取られがちです。柔道なら「一本背負い」を英語でどう表現するのか。野球であれば「ゲッツー」という和製英語はどう訳すでしょうか? ラグビーのように「モール」や「ラック」のように、なかなか馴染みが無くてもカタカナ表現の多いスポーツもあります。また、選手に関する用語も大切。野球の「三冠王」とか、サッカーやラグビーで「キャップ」(国の代表チームとして公式戦に参加した試合数)などの用語は不可欠。
こんな風に用語集を作成していると忘れがちなのが固有名詞。国際機関での会議通訳でも同じですが、「北朝鮮」や「台湾」などは注意が必要です。North KoreaやTaiwanと訳すべきなのか。それともDPRKやChinese Taipeiと訳すべきなのか。各国際機関の資料をきちんと確認することが大切です。また日本語では気軽に「イギリス」と言ってしまうことが多いですが、それがEnglandを指しているのか、それともBritainを指しているのか。この辺りもコンテキストから判断することが大切です。比較的日本語のスピーカーは気にせずに混同してしまっている部分です。
また、「協会」なども難しいですね。似た表現には日本語でも「連盟」があります。英語ではサッカーのようにFederationやAssociationが使われるスポーツと、ラグビーのようにUnionが使われるスポーツがあります。日本サッカー協会はJapan Football AssociationとAssociationです。しかし国際サッカー連盟は所属協会のことをMA(Member Association)と呼んでいます。各国協会はNational FA (Football Association)と呼ばれますが、大陸連盟はConfederationと呼ばれることもあります。覚えるまでは一覧表を作っておくとよいでしょう。
固有名詞と言えば、選手名も悩みどころ。どのスポーツでも、大きな大会の前になると選手名鑑が発売されます。場合によっては、大会のサイトや新聞のインターネットサイトで簡単に入手できるでしょう。それでも難しいのは選手のニックネーム。もしくは監督が選手を下の名前で呼んだ場合、すぐに苗字が出てくるでしょうか? 私が担当することの多いある会議では、「タケシ」という名前の人が2人います。ある海外のスピーカーはTakeshiとばかり口にして、苗字を口にしてくれません。従って、通訳をしている時にはそのコンテキストからどちらのTakeshiさんかを判断し、○○さん、XXさんと日本語訳するという苦労する場面もあります。
この様に簡単そうで迷うことがあるのが固有名詞。用語集を作るときには、これらの内容にも気を払っておくとよいでしょう。
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