スラングに慣れる
通訳業務の発生する状況は比較的公式な場が多いので、あまりスラングや下品な単語が使用され、通訳者がそれを訳さなければならないということはありません。いわゆるF-wordなどはオリンピックやパラリンピックの業務にあたる通訳者にとって、まず耳にする、もしくは口にしなければならないことはないでしょう。しかし、そのような単語が含まれるスラングを知っていると便利な時もあります。
というのも、選手や関係者が内輪で話をしている時に、公の場では使われない表現が使われることがあるからです。そんな内輪話を耳にすると、後で通訳をしなければならない選手や関係者の考えや置かれた状況を事前に理解することができます。それを基に業務に臨めば、「この選手はかなり厳しい状況に置かれているな」「このチームは最下位にさえならなければ予選通過で余裕があるな」などという事前情報になります。
そこで今回は、スポーツのシーンで使われることのあるスラングをいくつか紹介します。
1つ目はDFL。ディー・エフ・エルとスペルをそのまま言います。DNQやDNFは「予選落ち」や「リタイア(未完走)」の意味で使われますが、DFLは少し違います。これはDead F***ing Lastの略で、「最下位」の意味。もちろんLastとだけ言えば「最下位」の意味にはなります。Dead lastだと「誰が見ても最下位」の意味。僅差で最下位になってしまった、というのではなく、下から2位のチームや選手からも差を付けられているイメージ。それにF-wordがついていますから、本当にひどいパフォーマンスです。もしくは、僅差で最下位になってしまったとしても、それに対するフラストレーションの表れとしてDFLと言われることもあります。選手や関係者が公式の会見で口にすることはないでしょうが、陸上やローイングなどの競技ではよく耳にする表現です
またSOLという略語も。S**t out of Luckの略です。Out of luckは「運がない」です。それにS**tがついていますから、「全く運がない」の意味。スポーツ以外でもスラングとして使われることのある表現ですが、「どうしようもない」「手の施しようがない」という諦めの気持ちが表れています。
DFUは、仲間の選手にかける言葉。Don’t F*** Upの略。F*** upは「めちゃくちゃにする」の意味。「失敗するなよ!」「へまするなよ!」のように、Good luck!と同じ意味で使われます。DFUと一緒に使われることもあるのが、SOS。SOSというと、助けを求めているように思うかもしれませんが、Same Old S**tの略です。Same Old Thingであれば、「いつも通りの物」の意味。Oldは「古い」というより「前から代わり映えの無い」のニュアンスです。従って、SOSは「いつも通り」の意味です。John, DFU and SOS.とチームメートが声を掛けていれば、「ジョン、へまするなよ! 平常心で頑張れ!」程度の意味です。
先に述べた通り、公式の場でこのような言葉が聞かれることはないでしょうし、通訳者が口にすることもまず無いでしょう。しかし知っておいて損はない表現です。
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