知らない競技の担当になったら
通訳という仕事上、必ずしも常に得意な分野な仕事ばかりとは限りません。スポーツの大きなイベントですと、「武道系は詳しいけど、球技はさっぱりわからない」とか「水泳だけは詳しいけど、それ以外は聞かないで」といった得意・不得意が生まれます。私もスポーツは全体的に得意とはいえ、突然マイナーな競技の仕事が舞い込んできたら、相当の準備勉強に追われます。
そこで今回は、不得意な競技の通訳を担当することになった時、どう準備をすればよいか、いくつかのアイデアをお伝えしたいと思います。
まず、オリンピックの様な大きなイベントの場合、その競技が行われる会場となるコミュニティーや主管協会などが勉強会を開くことがあります。地元の人々向けに「少しでも○○という競技の知識を深めましょう」というイベントかもしれませんし、マイナーな競技をメジャーにしようとする試みの一環かもしれません。このような勉強会には、基本的な内容を1時間程度でカバーするものから、もう少し詳しい情報が共有されるものまで、色々あります。しかし情報量の少ない競技であればあるほど、こういった勉強会から学ぶことは多いでしょう。
担当することになった競技の公式のルールブックを読むことも大切です。ルールブックは基本的にその競技を司る重要なドキュメント。過去にこのコラムでも書きましたが、一般的に使われている用語が必ずしも正しいとは限りません。公式の記者会見などを担当する場合、やはりきちんとした用語を使わなければなりません。サッカーの「PK方式」は「PK戦」と呼ばれることも多く、選手などもそう口にしますが、正しい用語を知っておく必要があります。また、1冊のルールブックを読み込むだけで、非常に詳しい用語集を作ることができます。
また、その競技の過去の大会や試合のサマリーを読むこともいいでしょう。どのような選手が活躍したのか、どのようなプレーが話題になるのか、などの情報を知るだけでも、かなりの準備勉強になります。例えば1年前の大会で活躍し、今年の大会にも参加する選手の名前や戦績は、色々なところで口にされることが多いでしょう。そうすると、その選手について調べておくだけで、仕事をしやすくなります。
友達を利用するのも手段の1つ。皆さんの周りにスポーツファンはいませんか? 「○○さんはXXのスポーツの大ファンである」とか「あの人は良く観戦に行っている」などあれば、そう言った人に話を聞くのも1つの手。「ディナーを奢るから教えてくれない?」と1対1の個人レッスンをお願いしてみるのもいいでしょう。
通訳者を目指す人の多くは経済や政治、金融などを一生懸命に勉強してきた人が多いです。また、法律や医薬に強くなろうと色々な勉強をした人も多いでしょう。その中で忘れられがちなのがスポーツ。とはいえ、スポーツ関係の通訳は色々ありますから、苦手意識をなくすことも大切です。
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