役職名に注意
ビジネスの席や会議で通訳をしている時に気になるのは、参加者の役職名。「会長」「社長」「部長」など、一般的な単語も時には色々な訳名を持っていたりします。最近ではJohn-sanなどと言えるシーンも増えていますが、公式の場においては、きちんと英語と日本語の役職名を把握しておく必要があります。
これはスポーツの世界でも同じ。JOC(日本オリンピック委員会)など、多くの団体の会長はPresidentと訳されています。しかしJリーグには副理事長職があるものの、理事長職が無いように、変則的な組織もあります(Jリーグの理事長職はチェアマンです)。
よく悩むのは、各チームの役員。例えばヘッドコーチはコーチの統括役という印象を受けるでしょう。つまり、コーチ陣のトップ。「監督かな?」と思いがち。しかし野球の侍ジャパンを見てみると、監督とヘッドコーチは別の人です。監督は1人。ヘッドコーチは打撃コーチも兼任。それ以外に4人のコーチがいます。では英語はどうか、と公式ホームページを見てみると、監督はManagerと訳されています。Head coachという表記はありません。Coachが5名記載されているのみ。そうすると、もしも侍ジャパンの公式記者会見で通訳をすることになった場合、「監督=Manager」「コーチ=Coach」という訳が確定します。
しかしヘッドコーチも本当にCoachで良いのでしょうか? 必ずしもインターネット上の情報が正しいとも限りません。「本当にこれで良いのかな?」と少し注意する気持ちも大切です。もしも可能であれば、記者会見の当日にチーム関係者に確認したり、メディア向けに提供される資料に書かれた英語を確認するなどの作業が必要になります。
競技によっては上記の訳が当てはまらないこともあります。日本水泳連盟によると、競泳日本代表のスタッフは監督が統括しています。しかしこの「監督」はManagerではなくHead coachと訳されています。やっぱりコーチ陣のトップ役の監督はHead coachなのです。役職の日英訳に簡単な公式をあてはめられないことを示しています。
最近ではスポーツの世界でMentorの役割も強調されています。メンター、とカタカナで表記されることも多いですが、公式の指導者と言うより、色々な助言をもらう人のこと。困った時に相談する人です。その人が代表選手を選考するわけでも、先発起用を決めるわけでもありません。毎日の練習やトレーニングに一緒に参加するわけでもありません。しかし、悩みを相談したり、一緒にディスカッションをして解決策を見出したり、アスリートにとっては非常に大切な役割を果たす人のこと。特に個人種目の競技においては、メンターだった人がコーチになることもあり得ます。
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