金銭難に悩むアメリカの大学
アメリカの大学が景気後退の波を受けて非常に厳しい状況にあることは以前のブログに書きました。予算が豊富と言われているハーバード大学でもかなりの予算カットが行われて、数週間前に話題になりました。ハーバードとは違って公立で、全米でも失業率トップのミシガン州にあるミシガン州立大学は特に厳しい状況にあります。その結果、来年は私が所属していたアメリカ研究のプログラムが姿を消すことになりました。
アメリカの大学にはDepartmentとProgramがあります。Departmentは大学内で自立した存在として決定権を持っています。それぞれのDepartmentに教員は所属しています。逆にProgramは学位を与えることもできますが選任の教員はおらず、様々なDepartmentから関連した教員を集めています。例えばミシガン州立大学のアメリカ研究はProgramですからHistory Department、Anthropology Department、Sociology DepartmentなどのDepartmentの教員が集まってProgramを作り上げています。その結果大学の中ではDepartmentに比べてProgramは力が弱く、予算カットなどの煽りを受けやすい存在です。
ミシガン州立大学のAmerican Studies Programが無くなる、というのは非常に大きなニュースです。大衆文化を専門に研究する学術誌で世界トップのThe Journal of Popular CultureはMSUのアメリカ研究に属しています。また大衆文化研究では世界トップにランクされ続け、大学図書館の地下にはSpecial Collectionと呼ばれる書庫があります。またアメリカ研究の分野では全米ランキング1位のUniversity of Texas, Austinや2位のHarvard Universityに並んでトップ5位にランクされています。そのプログラムが存続を絶たれるというのはその他の大学に与える影響も小さくありません。
MSUのアメリカ研究プログラムはDepartment of Writing, Rhetoric, and American Cultures(WRAC)というDepartmentの一部として存在しています。今年の8月から私はWRACのAssistant Professorとして教えていますが、その経験で学んだのはDepartment内にWritingやRhetoricを教えようとする教員と、American Studies/Culturesを教えようとする教員が別れて存在していること。1つのDepartmentに2つの専門分野が存在しているも同然で、目指す方向性も価値観も全く違っています。これは教授会の内容からも明らか。この点が今回の大学の決定に影響した可能性もあります。
人文系のDepartmentをつかさどるCollege of Arts and Lettersはすでに3年間の雇用凍結(Hiring Freeze)を決定しています。新規教員は今後3年間雇用しないという意味です。学生の学費や食堂の料金は右肩上がりになり、アジアの留学生を必死に集め(今、中国人学生はアメリカの大学で人気です)、土日の冷暖房をOFFにし(研究者は土日こそ授業を教えなくていいので研究室で自分の仕事をしているのですが)、学会の出張費はカットされるという流れは当分続きそうです。
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