INTERPRETATION

史料の整理

木内 裕也

Written from the mitten

 アメリカ研究は学際的な分野といわれていますが、それでも研究者は歴史や社会学、人類学などより独立した分野の手法を用いて研究を行います。私のように歴史的アプローチを専門にしている場合は、文献を通してあるテーマに関する知識や情報を集めた後は、Primary Sourcesを分析して論文にまとめます。情報のソース(情報源)にはPrimaryとSecondaryがあり、Secondary Sourceとはあるテーマに書かれた学術論文や学術書を指します。例えばリンカーン大統領について書かれた研究書などです。逆にPrimary Sourceとはリンカーン大統領の書簡やメモ、スピーチなどです。例えば大学で「リンカーン大統領についての論文を書きましょう」となるとSecondary Sourcesを集めて論文を書くことが多いですが、研究者には独自の研究が求められますから、Primary Sourceの数と質、そしてその分析内容が研究プロジェクトの価値を左右します。

 Primary SourceはSecondary Sourceと違ってこの世に1つしかないか、数の限られている場合がほとんどです。新聞記事などはPrimary Sourceとして分類されることが多いですからそれは例外ですが、それでも19世紀の新聞などはそれほどたくさん残っているわけではありません。これらのPrimary Sourceは公文書館や大きな図書館の地下、研究施設などに保管されています。その様な場合大抵はある程度の分類がされています。しかし個人が家族や先祖の記録などとして保管している場合はダンボールにつめられているだけ、ということがほとんどです。すると研究分析の前に、文書の整理や分類をしなければなりません。

 私が今取り組んでいる研究プロジェクトは、個人で所有されていたPrimary Sourceを使っています。日本から約15キロの資料を送ってもらい、今はその中身を整理しています。非常に価値の高い資料ばかりです。せめてものお礼にと思い「資料の整理をどちらにしてもするので、分類した形でお返ししましょうか?」と尋ねると、「是非お願いします」という返事が。早速資料を種類ごとに分類し、その後は日付ごとに分類する作業を始めました。

 多くの研究プロジェクトではすでに分類がされているところからリサーチを始めるか、分類がされていない場合は自分の研究に関係のある文章だけをコピーして保管されているダンボールにただ戻す作業を繰り返します。そこで今までとはやや勝手の違うプロセスを経ての研究となりそうです。

 研究結果は秋にオハイオ州で行われるASALH(Association for the Study of African American Life and History)の学会で発表し、順調に行けば来年には学術書の1章として出版される予定です。DVDやテープの資料もかなりあるので、それらも利用して質の高い研究成果を出したいと思っています。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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