INTERPRETATION

「母の来米」

木内 裕也

Written from the mitten

 先週は大学院の卒業式について書きましたが、その卒業式に出席するために母が日本から1週間アメリカを訪れました。これまでアメリカには2度来たことがありますが、どちらも私がボストンに住んでいたときのことで、その時に乗り換え空港としてデトロイトに数時間滞在した以外は、ミシガン州は初めてでした。卒業式の約1週間前にアメリカに到着し、卒業式の2日後に日本に戻るという旅程で、約10日間の滞在でした。

 私の住むランシング周辺や、ミシガン州にはそれほど海外から人が訪れて観光を楽しむような場所はありません。ボストンのときは母が観光ガイドブックを購入していましたが、ランシングの観光ガイドなどは日本では売っていませんし、日本の観光客が訪れる場所ともありません。しかし普段の私が生活をしている場所を見たい、というリクエストを受け、アパートの周辺を散策したり、大学のキャンパスを訪れたり、友人とよく一緒に行くレストランで食事をしたりして楽しい時間を過ごしました。

 また自動車に乗って外国に行く経験をしたい、という母の願いを受け、カナダにも行ってきました。ランシングからカナダは1時間半程度で行くことができます。デトロイト川を渡ればカナダで、ミシガン州では19歳の誕生日にカナダに行く人が非常に多くいます(アメリカの21歳に対し、カナダでは19歳が飲酒年齢です)。もちろん今回カナダに向った理由は観光ですが、20歳の妹と一緒によくカナダに行くことがある友人は川の反対側にあるWindsorという街に詳しいので、彼女と一緒に3人で行ってきました。予想に反して国境越えの入国審査は往復とも手間取らず、とてもスムーズでした。カナダに入国した後は近くの駐車場に車を残し、2時間程度歩き回りました。デトロイト川では写真の通りデトロイトを背景に写真を撮りました。

 母が今回の来米で驚いていたのは、移動距離の違いです。ボストンに住んでいたときは自動車を持っていませんでしたし、都会でしたから長距離の移動はありませんでした。しかしミシガンでは例えば友人に会うために1時間車に乗ることは当たり前です。時速100キロ以上で高速を走りますから、それだけの距離を移動して友人と食事に行ったり、図書館に行ったりします。カナダに行った日は友人を迎え、カナダに向かい、時間があったのでアメリカに戻ってAnn Arbor周辺も観光し、友人の母親を含め4名で食事をして自宅に戻りました。それだけで500キロを超える移動距離でした。リンゴ栽培をしている場所がありますが、そこは50キロ程度離れた場所にあり、「50キロ離れたお店にリンゴジャムを買いに行ったのは始めて」と母が言っていました。公共交通機関でラッシュを経験したり、電車やバスが来るのを待つのと違い、自動車の場合は気軽に移動ができるからこそ、頻繁な長距離移動が苦にならないのでしょうが、日本の都会に住んでいるのとは、少し違った感覚でしょう。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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