INTERPRETATION

「卒業式」

木内 裕也

Written from the mitten

 先日、無事に卒業式に参加してきました。卒業式と言うとGraduationという言葉を思い浮かべがちですが、大学の卒業式などは特にCommencementという風に呼ばれます。これは「始まり」の意味で、次のステップに向けた始まりである、というメッセージのこめられたものです。日本ほど大騒ぎのされていないアメリカですが、それでも豚インフルエンザの影響で、卒業証書をもらうときには学長との握手をしないように、という知らせが事前に出される中での式典でした。会場は大学のキャンパス内にあるバスケットボールアリーナで、通常は試合が行われる部分が卒業生の席となり、観客席が家族や友人の席として使われていました。

 博士号取得者を含め、修士号以上を取得する学生は学部ごとに行われる学部生の式典とは別に、Advanced Degree Ceremonyとして卒業式が行われました。午後7時に始まる卒業式でしたが、1時間前に集合し、会場の地下にある部屋でちょっとした食事が出ました。修士号取得者が会場入りした後に、博士号取得者が会場に入り、約2時間に渡る式典が始まりました。私が修士課程を修了した際に、マサチューセッツ大学で基調講演をしたのは今のオバマ大統領でしたが、今回はアメリカで著名なジャーナリストが基調講演を行いました。日本の「卒業式」という雰囲気とは全く違う、お祭りのような雰囲気でした。

 卒業式で着用するRegaliaと呼ばれるガウンは、アメリカでは100年以上前に決められた形式に従うものです。Hoodと呼ばれる部分に使われる色は学部を示すもので、例えば教育学部なら水色、獣医学なら灰色、薬学はオリーブグリーンなどと決まっています。私のようにアメリカ研究の場合はArts, Letters, Humanitiesというカテゴリーに入るので白です。またミシガン州立大学の学校の色は緑色です。したがって、Hoodには白と緑が使われています。またPh.D.はPh.D. Blueと呼ばれる濃い青色もあり、Hoodは3色で作られています。非常に細かい決まりがあり、4月に注文しました。

 式典の中で担当教授がそれぞれの学生にHoodを掛けるのが、非常に象徴的な瞬間です。その瞬間に博士号が授与されるわけではないですが、博士号取得者が全員立ち上がり、それぞれの指導教授にHoodを掛けてもらうと、大きな拍手が起こりました。

 卒業式の後にはMSUの教授でもある友人や、卒業式のためにアメリカに来てくれた母と一緒に記念写真を撮り、自宅に戻りました。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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