INTERPRETATION

「ダラスカップ」

木内 裕也

Written from the mitten

 昨年は3月に開催されたサッカーの国際大会、ダラスカップに審判員として今年も参加してきました。世界各地から有名チームが集まり、ユース年代ではクラブチームのワールドカップに匹敵するといわれる大会です。今年もイタリア、ブラジル、イギリスなど世界各地から(日本からも浦和レッズが参加していました)チームが集まりました。審判員も各国のプロリーグを担当している人が集まり、非常にレベルの高い大会です。日本からもここ数年間Jリーグを担当しているレフェリーが参加していますが、今年も1名、大会に参加していました。

 ミシガン州からは今大会初参加のレフェリー2名と、私を含めすでに経験のあるレフェリー3名が派遣されました。大会初参加のレフェリー2名は17歳と19歳で非常に若い審判員です。まだ他の審判員に比べると経験不足は否めませんから割り当てられた試合は年代の低い試合でしたが、それぞれ一生懸命に頑張っていました。

 大会前にはプロリーグ担当審判員の体力試験も行われました。前述の初参加レフェリーはプロリーグを担当することはありませんが、せっかくの機会ですから私と一緒に参加をしてきました。その後は2日間に渡って合計10時間を越える講義を一緒に受け、「気分だけでもプロリーグ担当審判員になったようだ」と喜んでいました。

 ダラスカップのように大きな大会の楽しみは、試合だけではありません。大会前にはホテルの宴会場を貸しきって事前パーティーが主催され、皆で楽しい時間を過ごしました。大会中にはカジノ・ナイトと呼ばれるイベントや、レフェリー・パーティーなどが行われ、日本からダラスに訪れていた審判員も、楽しいひと時を過ごしているようでした。

 各地から審判員が集まると、各国なりの審判法を学ぶことができます。もちろん競技規則や基本的なシグナルは同じですが、細かいところでの違いもあります。ある試合では私と一緒の試合になった4名の審判員がルーマニア人、スコットランド人、イギリス人、そして私ということがありました。十分に事前の打ち合わせをしないと、思わぬミスコミュニケーションが起こる可能性があります。逆に普段では会えないレフェリーと親交を深めることもできます。例えば今回の大会を通して、今年の末か来年の始めにカリブ海に浮かぶ島で行われる大会に招待してもらうことができました。

 日本の大会との大きな違いは、アメリカの大会はスポンサーの協力を得るのが非常に得意な点です。例えばダラスカップだとDr. Pepperがスポンサーになっています。レフェリーを含め、ボランティアのテントなどにはDr. Pepperブランドの飲み物(水、スポーツ飲料、ソーダ)が並べられています。また果物、サンドイッチなど食べ物も豊富に提供されています。それだけではなく、アディダス社もスポンサーですから、関係者にはポロシャツやジャージが提供されます。大会側が費用を受け持つ前述のパーティーを含め、Hospitalityが得意なのもアメリカで開催される大会の特徴と言えます。審判手当ては日本よりも低いですが、色々な人と会い、楽しい時間を過ごしたりする機会があるのは非常に価値の高いものだといえるでしょう。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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