「英語力はやっぱり大切」
海外旅行や友達作りなど、日常生活の中ではカタコトの英語でも、間違えだらけの英語でも、とにかく話すことが大切です。仕事のシーンでも会議の休み時間や、業務後の飲み会などに外国からの訪問者が参加する場合には、やはり積極的に間違えを恐れずにコミュニケーションを取ることが大切です。しかしプレゼンテーションなど大切なシーンでは、やはりそれなりの英語力が必要です。それを改めて感じる機会がありました。
春と秋に通訳者が忙しい理由の一つに、学会が沢山行われる点が上げられます。私もこの時期は複数の学会に出席しなければいけなく、忙しい日々を送るのが通例です。先日はアラバマ州のバーミンガムで行われたASALH(Association for the Study of African American Life and History)の学会に参加しました。私が発表をしたセッションは偶然にも200人以上収容の大きな講堂で、他のセッションよりも聴衆が多く、比較的重要性の高いものでした。一緒に発表をしたのは、フランスのソルボンヌ大学からのアメリカ人学者、ウィスコンシン州大学の学者、そしてこれまで面識の無かった同じ大学の日本人の学者、そして私の4人でした。
この日本人の発表者は英語が苦手なようでした。発表論文の内容は非常に優れていたのですが、残念ながら彼の発音やイントネーションが理解の妨げになっているのが明らかでした。医学や薬学の学会と違い、一般の学会に通訳が入ることはまずありませんし、学会の内容がアメリカ研究であればなおさらです。学者ですから、彼も専門用語はきちんと把握していましたし、論文を読む限り非常に優れた文章でした。しかし英語でプレゼンテーションをするのを苦手としているのは明らかでした。
その結果、発表後の質疑応答ではなかなかコミュニケーションが成立しないことが何度がありました。既に発表の中で述べたことを繰り返し聞かれたり、「○○の部分がよくわからなかったので、もう1度言ってくれますか?」というように確認の質問があったり。
アカデミックな世界ではある意味、書かれた論文が優れていれば、コミュニケーションが下手でも何とかなってしまうというのも本当のところです。実際、ネイティブスピーカーでも事前に書いた論文をものすごい勢いで読むだけ(20ページ近い論文を例えば15分で読みきる、など)の人も沢山います。
プロの通訳者を利用できる場面であれば、プロを使うのが最善です。自分が通訳者だから、というのではなく、これまで通訳者を使わず、もしくは通訳者のクオリティーに妥協したためにコミュニケーションに失敗するという例を数多く聞いたり、見たりしたからこそ、そう強く感じます。しかしそうでない場合には自分で外国語を使って何とかしなければいけません。そんな時には、外国語のコミュニケーションを数時間コーチングしてもらったり、発表原稿でアドバイスを受けながらリハーサルを数多く繰り返すことが重要なはずです。
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