INTERPRETATION

「欧州の旅」

木内 裕也

Written from the mitten

 ヨーロッパで行われた2つのアメリカ研究の学会に出席するため、数週間ヨーロッパで過ごすことができました。その様子を何回かに分けてお伝えしたいと思います。

 1つ目の学会の開催地はベルギーのブリュッセル。アメリカからアムステルダム経由で向かいました。ベルギーを訪れるのは初めてのこと。やはりこれまで行ったことのない国に足を踏み入れるのはとてもワクワクします。

 学会のテーマはPoetic Ecologies。詩と自然について、主にアメリカ研究の研究者が発表を行いました。出席者の約半数はベルギーに住む研究者。残りの半分は国外からの参加者でした。また私のようにアメリカなどヨーロッパ外から参加した人も多くいました。ちょうど多くの大学で今は夏休みですから、休講にしたり代講を立てたりする必要がないため、普段より長期滞在を要する国外の学会にも出席しやすいのでしょう。

 ベルギーといってイメージするのはワッフル。そしてブリュッセルといえば小便小僧。フランスに住んでいるとき、ベルギー人がフランス人が語るジョークのねたによくなっていました。事前の知識はこの程度でしたが、現地では自由時間が多くあったため、市内をくまなく回ることができました。

 小便小僧は「世界3大がっかり」の1つだそうですが、その小ささに驚きました。特に柵の反対側に像があって、浜松町の小便小僧のように手で触れる距離まで近づくことができません。そのため余計に小さく見えるのでしょう。滞在中、何度か像の前を通る機会がありましたが、いつも観光客でにぎわっていました。

 小便小僧ほど有名でないのは小便少女。「リアルすぎる」「小便小僧のようなかわいさがない」とやや不評だそうですが、小便小僧から歩いて5分程度のところに、小便少女の像もありました。ちょうど日本の観光グループがこの像を見物しているところで、たくさんの人がカメラを向けていました。

 もちろんワッフルも食べました。現地の若者を見ていると、レストランでアイスクリームが果物ののっているワッフルを食べている人もいましたが、多くの人は路上のスタンドで購入したワッフルを歩きながら食べていました。そこで私も観光エリアから少し離れたワッフルのスタンドで1つ購入し、それを食べながら市内を歩き回ってみました。

 これからも各国を紹介しながら触れたいと思いますが、グローバル化によって様々な世界企業の進出を目にすることもできました。その最たるものは、街中に溢れるアメリカや、ヨーロッパ諸国のブランドと企業の看板、レストランなどです。写真のように、ピザハットの隣にマクドナルドがあり、その建物の上層階にはマリオットホテルがある、といった風景は、自分のいる国がどこであるか忘れさせるものです。写真だけ見ると、一体これがベルギーなのか、それとも他のヨーロッパの国なのか、もしくはヨーロッパ風の建築物が残るアメリカの都市なのか、まったくわかりません。70‐30ルールといって、提供する製品やサービスの7割は世界共通にし、3割は各国の需要にあわせるというビジネス戦略があります。ですから例えばアメリカとベルギーのマクドナルドやピザハットで売られている商品には違いがあります。しかし大半は世界共通。ベルギーらしい建築物などはまだたくさん残っていますが、それらは過去に作られたもの。例えば写真の建物は、私が滞在していたホテルで、アメリカでもフランスでもないユニークさが見られます。しかし最近生み出されている街の風景は、ベルギーらしさを失っているのではないか、と感じました。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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