INTERPRETATION

「Comprehensive Exam 1」

木内 裕也

Written from the mitten

今週の金曜日の夕方から、Comprehensive Examと呼ばれる総合試験の1つ目を受けます。ミシガン州立大学のアメリカ研究で博士課程を取得するには、3つの総合試験に合格しなければいけません。この試験では、それぞれを担当する指導教授が特定分野から50冊〜100冊程度の書籍を指定します。それを読んだ後に、この試験を受験します。試験は72時間コースと4時間コースがあり、前者は自宅にて行います。後者はキャンパス内でどこかに部屋を借りて行います。これを3回、12ヶ月間以内に行わなければいけません。その1つ目が、今週末に予定されています。

 今回の試験テーマはAfrican American Studies and History。南北戦争以降の黒人史です。写真にあるような書籍のリストを5月末に指導教授から受け取り、それ以来、平均で週に5冊〜6冊程度のペースで読み進めてきました。ある意味で、受験する分野の重要な書籍を全て網羅し、知識を蓄えることが目的ですから、この試験に合格すると言うことは、その分野を自分の専門分野として公言する資格を得ることにもつながります。しかし、実際に本の内容を全て覚えることはできませんし、試験では何を調べても、読んでもいいことになっていますから、写真のように内容を書き出して、まとめてあります。

 私は72時間コースを選択。試験問題は3つです。詳細は金曜日の午後にならないとわかりませんが、大まかなテーマは、既に話し合いを行いました(時には自分で問題を作成し、それに答える、と言う場合もあります)。1つ目の問題は、African American Studiesという分野を定義することです。「社会学とは何か?」「歴史とは何か?」という風に、「アフリカ系アメリカ研究とは何か?」を15ページ程度で定義しなければなりません。意外にも日本とアフリカ系アメリカ研究は深いつながりがありますから、当日の質問には「日本とのつながりを踏まえ」なんて表現が入っているのではないかな、と想像しています。

2つ目の設問は、アフリカ系アメリカ研究のシラバス作り。大学1〜2年生に15週間の入門クラスを教えると仮定した場合、何を、どんな順番で、どの本を使って教えるか、まとめなければなりません。概略は既に考えてみましたが、入門クラスだと使える本も限られますし、アフリカからアメリカに連れてこられた時代から、今日までの長い歴史を15週間に詰め込むのは、非常に難しいです。「この本も大切だ」「あのことも教えないと」と考えていると、あっという間に3年生や4年生が履修するような授業のシラバスになってしまいます。

3つ目の問題は、博士論文の前書きと第1章の提出です。これは既に書き始めていたので、推敲を重ね、内容をもう少し向上させて提出させるだけです。

12月には第2回目の試験が予定されています。そのテーマはUrban Studies and History。アメリカの都市部に関する内容です。来年の3月には3つ目、最後の試験。これはアメリカ大衆文化がテーマです。3つ全てに合格すれば、ABD(All But Dissertation)と呼ばれる身分になります。

 来週のブログの更新は試験終了前ですが、2週間後のブログでは無事に合格の知らせをお伝えできればと思っています。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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