INTERPRETATION

「アメリカ7不思議 Part2」

木内 裕也

Written from the mitten

先週に続いて、アメリカ7不思議。

・積雪とワイパー

 多くの日本人ドライバーは、翌日に積雪が予想される前夜に車のワイパーを立てるでしょう。雪の重みでワイパーが折れてしまうのを予防する目的である、と聞いたことがあります。しかしなぜかアメリカ人はワイパーを立てていません。ボストンでも、ミシガンでも全然ワイパーを立てている車を見かけないのです。湿気が少ないため、数センチどころか10センチ以上の積雪があってもあまり重くないからかもしれませんが、ワイパーが折れている車を見かけたこともありません。駐車場に行くと一面銀世界ですが、そこに2本のワイパーが飛び出ていると、それはいつも私の愛車シビック。写真をご覧ください。どの車もワイパーが立ててありません。私が日本では当たり前だと思っていた習慣が、アメリカでは常識ではなかった例の1つです。

・平等

 「アメリカ」と聞くと、「自由」「正義」「平等」などのキーワードが思い浮かびます。しかしアメリカ社会を細かく見てみると、実際にはまだまだ理想から程遠い姿も浮かんできます。その1つが「平等」というアイデア。実際、アメリカ合衆国憲法の第1条に、原住民や黒人奴隷は白人の60%でしかない、と明記されています。後に修正されましたが、この「五分の三」という表現がアメリカの矛盾を物語っているとも考えられます。そして今でも、さまざまな点で平等は達成されていません。個人的な経験では、警察官の態度があげられます。私が白人の友達数人と集まって、街中で立ち話をしていても、警察官が寄ってくることはありません。しかし黒人の友人数人と集まって立ち話をしていたときに警察官が寄ってきて、何をしているのか、どこに住んでいるのか、などと質問をしてきたことが何度かあります。同じ大学院に通う友達と、同じ街で立ち話をしているにもかかわらず、警察官が「自分たちを守ってくれる人」から「自分たちを怪しむ人」に変わってしまうのです。黒人の友達と買い物に行くと店員が後ろをついてくることもあります。肌の色を万引きなどの犯罪と結びつけるのでしょう。白人でも黒人でもない私が、両方の友達と付き合っていると見えてくるアメリカの不平等です。

・mononucleosis

 アメリカ人大学生の多くが伝染性単核症(mononucleosis)と呼ばれる病気に感染します。一般的には”mono”と略して呼ばれたり、唾液などによって感染することからkissing diseaseと呼ばれてもいます。しかしとても不思議なのは、日本人でこの病気に感染した、といって学校を休む例を聞いたことがない点。逆にアメリカでは各学期に数人は感染して長期欠席をします。生活習慣の違いのため、日本人は幼少期にすでに抗体を持ち、思春期の交代保有率が高いため問題にならないそうですが、それにしてもかなりの数のアメリカ人大学生がこの病気に感染します。

2週間にわたって、思いつくままにアメリカの不思議を個人的な視点から7つ並べてみました。ある意味ではステレオタイプに基づく部分もありますが、アメリカにいらしたことがある場合は「そうだった」とうなずかれた事があったかもしれません。アメリカにいらしたことのない方は、訪米の際にはトイレのドアの隙間や、駐車している車のワイパーに注目してみてください。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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