INTERPRETATION

「 特製チーズはいかが? 」

木内 裕也

Written from the mitten

 私が現在研究を行っているMichigan State University(ミシガン州立大学)は1855年に設立されました。農林業関係の研究敷地は60平方キロを越え、メインキャンパスと呼ばれる敷地だけでも20平方キロを越える広大な学校です。現在ではメディカルスクールも、ロースクールも、またあらゆる文系、そして理系の学部、大学院、研究所の完備されているアメリカで8番目に学生数の多い大学ですが、初期はAgriculture Schoolとして農学部を中心とした比較的小さな研究機関でした。その為、今でもその広大な敷地には牛や馬をはじめ、様々な動物が飼育されています。遺伝子工学や微生物学など最先端の研究を行うと同時に、酪農に関する研究も行われており、キャンパスにはMSU Dairy Storeと呼ばれる乳製品を集めたお店があります。

 私の研究室から歩いて1分も掛からないところにも、Dairy Storeがあります。そこでは大学で飼育している牛から搾った乳で作った牛乳、チーズ、アイスクリームなどが売られています。乳製品の加工はもちろん、販売も大学生が行っています。日本では清里のソフトクリームが有名ですが、それと同じ、もしくはそれ以上に新鮮なアイスクリームを年中楽しむことができます。ミシガンの冬はマイナス20度を下回りますが、特製アイスクリームは大人気。キャンパスツアーに参加する高校生やその両親にも大人気です。チョコレートやバニラといった一般的な風味から、シナモン、ブルームーン、ブラックチェリー、レモンカスタード、メープル、パンプキンなど全部で40種類近くの味がそろっています。その中でも極め付きは”Death by Chocolate”と呼ばれる濃厚なチョコレートアイスクリーム。「甘さ控えめ」がキーワードの日本人には1口で充分かもしれないほど、非常に濃厚な味わいです。

またチェダーチーズやヤギの乳から作ったチーズをはじめ、メキシコ料理で使われるハラペーニョ唐辛子のみじん切り入りのチーズもあります。これらのチーズは私を始めワイン好きな研究者仲間の間で大人気。論文を書き終えて、もしくは翌日の授業の準備を終えて寝る前にワインをグラスに一杯飲むときのお供です。また、チョコレートチーズという一風変わったチーズも。実際に口にしてみるとチーズの味はほとんどしなく、チーズの柔らかい歯ごたえがあるだけ。味はチョコレートです。

売られているのはチーズだけではありません。特製チーズを使った様々なスープも売られています。またホットチョコレートやコーヒーのように、特製牛乳を使った飲み物もあります。また昼食時にはチーズトーストも。アイスクリームをデザートにすれば、小腹が減った時に最高のメニューです。農業関連の勉強をしている学生が、将来チーズやアイスクリームを作ったり売ったりする立場になるのかわかりませんが、乳製品というつながりを利用して営業や販売など、ビジネスの経験や知識を得ることはきっと役に立つでしょう。またチーズや牛乳を売るだけではなく、色々なアイスクリームの味を開発したり、チョコレートチーズのような斬新な商品を編み出す創造力も、きっと役に立つに違いありません。起業精神、というほど大掛かりなことではありませんが、大学に通いながら社会の知識を身につける、というのも貴重な経験でしょう。

さて、今週の投稿が今年最後の投稿となります。皆さんの年末年始が素晴らしいものになりますように。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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