INTERPRETATION

「感謝祭とBlack Friday」

木内 裕也

Written from the mitten

 アメリカの11月末は感謝祭(Thanksgiving)で盛り上がります。カナダでは10月に祝うそうですが、アメリカは11月の第4木曜日と決まっています。10月はハロウィン、11月は感謝祭、12月はクリスマスと、1年最後の3ヶ月は大忙しです。

感謝祭とは1620年にPilgrim Fathersと呼ばれる102名の清教徒のヨーロッパ人が新大陸アメリカに移住し、翌年1621年に収穫を神に感謝するために始めたお祭りです。特に新しい土地で耕作に苦しむヨーロッパ人が原住民の協力を得た、という名目で祝われています。しかし実際のところ、原住民の視点から考えるとヨーロッパ人の移住によって土地を奪われただけでなく、迫害や虐殺につながったということで、感謝祭を祝う風潮に批判的な意見も存在します。

とは言っても、今年も街中が感謝祭ムードに包まれました。今では歴史的な意味は薄れ、家族で集まって七面鳥を食べる日、というイメージが強くなっています。私も火曜日の午後に学部の授業を教えた後、友人の住むニューヨーク州Sauquoitという街へ向かい、日曜日までの6日間をゆっくりと過ごしました。感謝祭はアメリカのクリスマスや日本のお正月同様、家族のイベントです。実家に戻る人々の影響で飛行機や高速道路が大変混雑する1週間でもあります。友人宅ではカリフォルニア州に住む長男を除いた娘2人や親戚、合計9名が集まりました。感謝祭のメインイベントは何と言っても七面鳥を中心としたディナー。水曜日の午前中から木曜日のために、母親を中心として家族で協力しながら準備をします(写真は下準備中の七面鳥)。メインディッシュの七面鳥は大きなオーブンの中で10時間、ゆっくりと調理されました。当日は10キロを超える七面鳥、クランベリーソース、マッシュポテト、フルーツとパスタのサラダなどが食卓に並びました。感謝祭は誰もがついつい食べ過ぎてしまう日。やはり今年も皆、「やっぱり食べ過ぎた」と言いながら、食後にはパンプキンやリンゴのパイにバニラアイスクリームを乗せて楽しみました。

感謝祭の翌日はクリスマス商戦の第1日目で、Black Fridayとして知られています。デパートや量販店は感謝祭の翌朝4時位に開店し、早朝セールを行います。私も数年前に参加しました。4時前に友人に起こされ、5時の開店を前にデパートの前で列を作ります。開店の時までにはかなりの列ができていました。結局何も買わずに帰宅しましたが、11月末にアメリカに滞在する機会があれば、1度だけ経験するのも悪くはありません。

感謝祭の週末は大抵の人が家族とリラックスして過ごします。私も読書をしたり、あまり寒くない時間を見計らって散歩に出かけたりしました。しかし休暇が終わるとすぐに年末。アメリカ人にはあまり「師走の忙しさ」という感覚が無いようですが、学生にとっては秋学期が12月中旬に終わるため、期末テストに向けた勉強の時期です。またBlack Friday以降はクリスマスプレゼントも探さなければいけません。大掃除こそ無いものの、何となく落ち着かない数週間となりそうです。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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