INTERPRETATION

「雪道の運転」

木内 裕也

Written from the mitten

 日本でも北日本や豪雪地帯などに住んでいる人々は、雪道の運転に慣れていることでしょう。しかし関東地方などでは雪が降った途端に交通が麻痺し、あちらこちらで事故が発生します。アメリカでもめったに雪の降らない地域で降雪があると、同じような状況になります。雪が降ると、誰もが外出を控えます。しかし私が今住むミシガン州では、雪が降っていることを理由に外出を避けていたら、1年間のうち半分は室内で過ごさなくてはいけないような地域です。意味も無く外に出ることはありませんが、相当の大雪でも買い物に出かけたり、映画に向かったり、それほど雪の影響を受けることも無く外出します。公共交通機関が発達していない地域では、自分たちで運転するしかありませんから、雪道での運転に慣れる必要があります。

 ボストンに住んでいたときは車を持っていませんでしたが、数年前にミシガンに引っ越してきて車を購入し、その年の冬から雪道を運転しなければいけなくなりました。タイヤは全天候型のタイヤが最初から装備されていたので、チェーンを巻くことも、冬になったからといってタイヤを交換する必要もありません。実際、チェーンを巻いている車をいまだ見たことはありません。

 最初の大雪では、近所のショッピングセンターの駐車場へ向かい、雪道での運転を練習したりもしました。急ハンドルや急ブレーキ、急発進が禁物なのはもちろん日本の教習所で習っていましたが、実際に何十センチも積雪し、道路には雪がたくさん積もっている状況で運転するのとは違います。当たり前のことですが、ブレーキを早めにかけ、無理に交差点を曲がったりすることは普段よりも避けなければなりません。

 ただ路上に出れば、周囲の人は雪道に慣れています。先日も夕方から雪が降り始め、除雪が間に合わない中、路上には10センチ近い雪が積もっていました。その中を、車は50キロ、60キロ出して走っています。道が広いのと、交通量が少ない(だから雪が積もったままなのですが)ため、曲がり角でどの車も大きく膨らみ、中にはかなり横滑りする車もありますが、何事も無いかのように走り去っていきます。高速道路になれば、ある程度除雪はされていますが、まだ雪が少し残る中、100キロを越す制限速度どころか、速度オーバーで流れています。

 今では私も雪の運転に慣れ、車が滑り始めたときにどうすればコントロールが利くのかなどを学ぶことができました。しかしときにフロリダ州などのナンバープレートをつけた車が道路から外れてしまっているのを見ると、恐る恐る運転していた数年前を思い出します。今、これを書いている外は10センチくらいの積雪です。今夜から明日にかけては20センチから30センチの降雪が予想されています。しかし今夜は100キロ弱離れた所に出かけ、友人と食事をすることになっています。先ほど電話で話をしたときに、「今日の夜は雪がすごいらしいね」といいながらも「じゃあ、またあとで」と電話を切りました。彼女も全く、積雪を理由に外出を避けるという考えを持っていないようです。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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