INTERPRETATION

オンラインレクチャー

木内 裕也

Written from the mitten

 1月に始まった春学期もあと1ヶ月を残すだけとなりました。5月中旬からは夏学期が始まります。私はその準備を始めています。5月第3週から始まる夏学期は、通常の15週間で1セメスターとなる春や秋と違い、7週間で1セメスターです。単位の数は同じですから、授業の頻度や宿題の量などは通常の学期の2倍です。15週間で終わらせる内容を7週間で終わらせなければいけないので当然ですが、かなりのスピードで授業は進みます。

 また、私が夏に担当する授業は25%がオンラインです。一般的な授業はそれぞれの授業に割り当てられたインターネットのサイト上で宿題があったり、ちょっとしたアクティビティーがあったりしますが、この授業は授業内容の25%をオンラインで行う決まりになっています。他にもHybridと呼ばれる50%がオンラインの授業や、100%オンラインの授業もあり、教える側も通常とは違ったほうほうで教えるスキルが求められます。

 オンラインで授業を行う場合、通常のレクチャーよりも準備に時間が掛かります。授業で教える内容は基本的にそれぞれの教員の専門分野ですから、「こんな内容を話そう」といった程度を決めるだけで、90分でも120分でもレクチャーはできるものです。時間が掛かるといえば、パワーポイントでスライドを作ったり、配布資料を作ったりする程度。授業に費やす時間のほとんどは採点に取られるといっても過言ではありません。しかしオンラインで授業を行う場合には、「どんなアクティビティーをするのが効果的か」ということを考え、写真やビデオを集め、それをアップロードする必要があります。また学生とのやり取りが少なくなりますから、ディスカッションを始めた後の軌道修正が通常の教室と違ってできません。そのため、教材を作る過程で、ディスカッションの内容がずれないように気を使う必要があります。

 このような作業を行うと、準備時間がこれまでの数倍掛かります。しかし大学にとっては遠方に住む学生も授業に参加できますから、利益の出る授業としてみなしています。例えば友人が教えるウイスコンシン州立大学は、カリフォルニアに住む人々に授業をオンラインで提携することで大きな利益を出しています。「利益の出る授業」ということで、少しですが教員には研究費が支給されます。私も、教材作りをする学部生を雇えるようにと、$500の研究費をもらいました。知り合いの学部生が、私のために資料を集めたりしてくれています。

 オンラインでは色々なアクティビティーが行えます。パワーポイントを使って行うような授業を録画・録音してアップロードするだけではなく、ディスカッションを行ったり、ブログ形式に意見交換を行ったり、エッセーや選択式など様々な方式で履修内容の確認を行ったり。またOnline Office Hoursとして、オンライン上で教員がオフィスアワーを行い、学生とチャットを使って話をすることもできます。

 今のところは順調に準備が進んでいます。特に大きな問題が出ずに授業が進むことを願うばかりです。

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木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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