INTERPRETATION

Valentine’s Day

木内 裕也

Written from the mitten

 日本と変わらず、アメリカでもバレンタインデーは商業的要素が強くなっています。まだホワイトデーなるものが現れるほどではありませんが、宝石店や花屋、カードのお店などが盛んに広告を出していました。今週は約1週間遅れですが、そんなバレンタインの話です。

 日本ではバレンタインデーと呼ばれることが多いですが、正しくはValentine’s Day(もっと正しくはSt. Valentine’s Day)です。チョコレートを必ずしもプレゼントするという決まりはありませんが、チョコレートなどのちょっとしたお菓子をプレゼントすることは親から子供へ、夫婦の間で、恋人間などで行われます。しかし普段は500円のチョコレートが1,000円で売られ、2,000円を越すチョコレートが売られるということは普通ではありません。都市部へ行けば、有名なお店のチョコレートやトリュフが数十ドルで販売されていますが(例えばボストンには9つのトリュフ入りで45ドル〜、というお店があります)、これは一般向きではありません。私はバレンタインデーの2日前に友人の家に行く機会がありました。彼女は普段大学の近くに住んでいるので、実家に戻るのは月に1度か2度。そこでバレンタインでーには少し早いのですが、彼女の両親が彼女にバレンタインデーのプレゼントを渡していました。そこで渡していたのは、どこのお店でも3ドル程度で買えるチョコレートの大袋。バレンタイン用にピンクの包装がされていましたが、特別なところはないプレゼントです。It’s the thought that counts.(大切なのは気持ち)という言葉が良く聞かれますが、それを象徴するようでした。

 また金額という観点から考えると、日本のメディアから受けるイメージがやや偏っているのかもしれませんが、日本でのバレンタイン産業はアメリカのそれに比べ裾野が広いと感じます。言い換えれば、一般の人々も日本ではバレンタインに多くの出資をする、ということです。バレンタインデーの前日には「今年のバレンタインは30ドルは予算を取っておいたほうがいいですよ」とTVで話をしていました。もちろん、何かの記念の年であったりすれば宝石を買ってプレゼントしたりもしますが、近所のスーパーでちょっとした花束を買い、一緒に食事に行く、というだけのバレンタインを過ごす人が大半です。

 Valentineという言葉は、Be my Valentine.という風にも使われます。バレンタインデーは日本と同様に「好きな人と過ごす」日です。特に今年は日曜日でしたから、街中でバレンタインを楽しんでいる人々を見かけることがありました。このように「一緒にバレンタインを過ごす相手」をValentineと呼ぶのです。このように愛の告白をすることはないでしょうから、どちらかと言えば「一緒にバレンタインを過ごそうね」という約束であったり、「この人は私のことを好きかも」という状況で相手に伝える、というコンテキストで使われる表現です。

 また今年はバレンタインを控えた金曜日にValentine’s Dayという映画が公開され、スターがたくさん出演しているということで話題になっていました。特別素晴らしい映画、というわけではありませんでしたが(個人的な感想ですが)、この時期にあったCute movieという表現が合う映画でした。

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記事を書いた人

木内 裕也

フリーランス会議・放送通訳者。長野オリンピックでの語学ボランティア経験をきっかけに通訳者を目指す。大学2年次に同時通訳デビュー、卒業後はフリーランス会議・放送通訳者として活躍。上智大学にて通訳講座の教鞭を執った後、ミシガン州立大学(MSU)にて研究の傍らMSU学部レベルの授業を担当、2009年5月に博士号を取得。翻訳書籍に、「24時間全部幸福にしよう」、「今日を始める160の名言」、「組織を救うモティベイター・マネジメント」、「マイ・ドリーム- バラク・オバマ自伝」がある。アメリカサッカープロリーグ審判員、救急救命士資格保持。

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