INTERPRETATION

第58回 社内通訳とフリーランス通訳-その6

寺田 真理子

マリコがゆく

社内通訳に比べて、フリーランス通訳のいいところってなんでしょう?

それはまず、お仕事を選べること。社内通訳だと、「こういう気の滅入るような話は通訳したくないなあ~」とか、「このお客さまって、インテグリティに問題あるんじゃ・・・」なんていうときでも、「その部分だけやりません」というわけにはいかないですからね。全部まとめて引き受けないといけませんが、フリーランス通訳なら、やりたくないお仕事はお断りして、自分の興味のある分野のお仕事を進めることができます。自分がご一緒したいと思えるお客さまを選んでいくこともできます。

とはいっても、一度お断りすると次からはお声が掛からない・・・なんていうこともあるわけで。自分の進みたい方向性と、収入のバランスを考えなきゃいけないので、このあたりの舵取りが悩むところです。

とはいえ、組織に所属するのが苦手な人にとっては、このしがらみのなさはたまりません。ややこしい人間関係に煩わされて精神的に消耗することもないですし。組織って、どうしても組織であるためにうまくいかないことがつきものですよね。そんな「組織であるがゆえのしょうもなさ」に振り回されずにすむんです!

それに、面白そうな、変わったお仕事って、たいていは単発で発生するんですよね。まあ、社内でしょっちゅう風変わりな講演やイベントばっかりやっているわけにはいかないでしょうから、当たり前といえば当たり前なんですが・・・。

毎回新しい世界に入っていくのは、大変だけれど楽しいものです。それだけ自分の世界が広がりますし、1回1回のお仕事にかける意気込みも強いし、充実感もあります。

会社の中で迷子になったり、信じがたいようなおバカさん発言やわがまま放題・・・そんな強烈なキャラで覚えているお客さまが多いのは社内通訳でのお仕事ですが、お仕事自体が面白かったり、内容が強烈だったりして印象に残っているのは、やっぱりフリーランス通訳としてやったお仕事のほうですね。

こうやって見てくると、「しがらみなく、好きなお仕事を充実してできるんだから、やっぱりフリーランス通訳っていいよね」というお話になりそうですが・・・。

とはいえこれはこれで、また大変なのです。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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