第57回 社内通訳とフリーランス通訳-その5
社内通訳でとても困ること。それはやっぱり、通訳という仕事への認識の低さでしょう。
これはもちろん、通訳の仕事をしていく限りずっと戦っていかないといけないものではあります。でも、社内通訳だと、これが毎日なんですよね・・・。毎日となるとやっぱり、精神的なストレスが大きいです。何度お願いしても資料はくれないし、休憩もさせてもらえないし。一人でぶっ通しで一日中同時通訳をやらせて当たり前という世界。
「だから、わたしは機材じゃないのよ!!」
そんなふうに叫びたくなる日々が続きます。というより、実際に叫んで暴れたりもします・・・。
フリーランスだと、直接個人でとっている仕事じゃなければ、資料や休憩時間その他の交渉はエージェントが代行してくれますよね。でも、社内だと、自分で自分の通訳環境を守るための交渉もやらなきゃいけないことになります。
通訳する主な相手である外国人上司との相性も問題になります。通訳するっていうことは、常に相手と至近距離で一緒にいることになりますからね。接近できてうれしいような人は、まあ、いません。ウィスパリングしながらも微妙に離れていったりして・・・。
困ったことに、手のかかる上司も多いんですよね。ランチに行ってメニューを全部片っ端から説明させた挙句、「最初のを忘れちゃったから全部もう1回教えて」とか。やっとのことで注文したら、隣の席の人が食べているものを見て「あれがいい!やっぱりあれにする!」とか。上司というより、ただの駄々っ子です。
「わたしは通訳?それともあなたのお世話係?」
わからなくなることもしばしばです。
そして、コミュニケーションギャップ。
「どうして訊かれていることにちゃんと答えないのー!あーあ、また怒らせちゃった!」
外国人上司の質問に対して、意味不明な発言の数々を繰り返す日本の部下の方々に翻弄されます。
トドメをさすように、席が・・・隔離なんです。ひとりだけぽつんと離れた通訳者の席。もしくは、少しでも離れていたい上司と二人で陸の孤島。困ったことがあっても訊ける相手がいなかったり。そしてしょっちゅう困ってばかりの上司に呼びつけられる羽目に・・・。
うーん。じゃあ、フリーランス通訳はどうでしょう?
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