INTERPRETATION

第55回 社内通訳とフリーランス通訳-その3

寺田 真理子

マリコがゆく

社内通訳のウラの楽しみを大公開しちゃいましょう。

まずは、なんといっても人間観察でしょう。一度お会いするだけなら、「いいクライアントさんだったな」くらいで終わってしまうものですよね。でも、社内通訳だと、何度もご一緒して、同じ人のいろんな顔を見ることができるんです。

たとえば、いつも満面の笑みを浮かべている人が、ミーティングで追い詰められて、青ざめてキレてしまったり。さっきまで感じがよかった人が、上司がいなくなったとたんに豹変して暴言を吐いたり。

「あの人が、こんなリアクションをすることもあるんだ!あの人って、こんな顔もあったんだ!」
そんな思いがけない発見の連続です。

特に、通訳者だと、第三者としてその場に入って、滅多に見られないものや聞けない話を聞いて、しかも両方の当事者から裏話が聞けてしまうというおまけつき。
これって、友達同士をセッテイングして、後で両方に「ね、どうだった?どうだった?」って訊いてみる・・・それに近い楽しみがあります。あれ?なんか違いますか?

それに、上司を操れる・・・というと人聞きが悪いですが、「上司あしらい」が上手になります。ミーティングを通してものの考え方やツボがよくわかるので、自分が何か主張しようというときに、「こういう論理展開でいけば納得するな」とか、
「この話を持ってきて、その流れでいけばOKするだろうな」と、観察した情報をフル活用して主張を通せるようになります。

通訳者の意見をやたらと聞きたがる上司もいます。社内の人の能力や、仕事を任せても大丈夫そうかについて、意見を求められることもあるんです。「わたしはこの人と個人的に仲がいいから、ひいき目に見ている部分があるかもしれないですよ」と前置きをしたりして、努めて公正な意見を言うようにはしていました。でも、フィクサー的な楽しみ方をしようと思えば、「ウラ人事権」を持つくらい、できちゃうんですよね。

英語を使う他の仕事につきたいと思った場合も、通訳のポジションから移行することができます。社内のことがわかっているし、普段からマネジメントと仕事をしているので、仕事が評価されるとそういうお話があることも、通訳にこだわらず、英語を使って働きたいという人にはいいかもしれません。

じゃあ、社内通訳の困ったところは?

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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