INTERPRETATION

第47回 カタカナさん

寺田 真理子

マリコがゆく

こんな話し方をするお客さまって、結構多いと思いませんか?

「このロールを決めて、リソースをアサインしなきゃいけないんだよね。あと、ここのポジションはハイヤリングするから。ジョブ・ディスクリプションをファイナライズして、アプルーバルもらおう。クリティカルなイシューはやっぱりコスト・リダクションのとこだね。ディテールをつめてプロポーザルを仕上げないと」

こんなお客さまのことを、「カタカナさん」とわたしは呼んでいます。外資系企業だと、これぐらいならまだ「普通」の領域かもしれませんね。「なにもそこまで」っていうくらい、カタカナを連発する人の多さに驚きます。

「そこまでやるなら、自分で英語でしゃべれば?」

通訳する身としてはごく自然にそんな感想を抱いてしまいます。でも、不思議なことにみなさん、英語で話すわけではないんですよね。話せそうではあるんですが、通訳を使うことにこだわる方が多いのです。

カタカナさんの通訳をしていると、なんだか、「用語指定」されている感じなんですよね。そのまま英語の発音にしていけばいいので、たいていの場合は楽といえば楽なんですが。

でも、ときどき「このカタカナは英語だとしっくりこないから別の言葉を使いたい」っていうときもありますよね。なのに、「カタカナさん」に限って、妙に用語指定にこだわりがあるんです。「この言葉を使って訳してほしい」というのがビンビン伝わってくる感じです。用語指定された言葉を使うごとに「+1点」とカウントされていくような・・・。

別の言葉を使って訳してしまうと、「どうしたんだ!?俺の指定した用語を使ってないじゃないか~!」という気配を感じ、こちらも「だからその用語指定じゃ伝わらないのよ!わかって訳してるのよ!」というオーラを発して対抗します。そんなひそかな心理戦を繰り広げることもあるんですが、これって結構体力消耗するんですよね・・・。

言ってもいいですか?

「や、やりにくぅ~!」

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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