INTERPRETATION

第42回 あらしと通訳

寺田 真理子

マリコがゆく

『ゲームセンターあらし』。そんなマンガがあったのを、知っている読者の方はいるんでしょうか?

「なに、それ?」という方のために、どんなマンガかちょっと解説しましょう。
主人公の少年、「あらし」くん。勉強ダメ、運動神経なし、おまけに超出っ歯。ぜんぜんイケてない彼ですが、ゲームの時には別人のように華麗に変身!天才的なセンスと超速攻撃、出っ歯までも武器に(!)目には火の玉浮かべつつ、並み居る敵を次々と倒していくのです。
『小学○年生』という雑誌に連載されていました。「普段のあらし」と「ゲームのときのあらし」の比較表なんかもあったりして。たとえば、50メートル走なんかが「普段のあらし」は14秒(だったかな?とにかく遅いんです)なのに「ゲームのときのあらし」は5秒(何者!?)とか。そんな具合です。

なんでそんなことをお話したかといいますと。よく言われるんです。

「仕事のときと普段と、全然違いますよね~」

そうです。自分でもわかってはいるんです。平たく言うと、普段のわたしって、どうも「アタマ悪そう」な話し方をしているんですよね・・・。

「えーとねー、あのねー、そういえばねー、あのねー」
だから、はやく要件を言いなさい。
「えーと、えーと、あのね。あれ?なんだっけ?なんか言おうとしたんだけど、忘れちゃった」

・・・・・・。自分の知能に不安を感じます。

通訳しているときに時々、
「あ、わたし、こんなに速くしゃべれるんだ!アタマの回転が速い人みたいじゃん!こんなに語彙もあったのね~」
しみじみと感慨にふけります。

通訳者になる前は、仕事のときと普段でこんなに差がなかったはずなんですが・・・。通訳を続けた結果、仕事中の無理がたたって、普段のペースが必要以上にスローダウンしてしまったんじゃないかと思うのです。

文章を読んで「マリコ」をご想像いただくと、どうやらみなさん「機関銃のようにしゃべりまくる、押しの強い女」を想像されるようなんですが・・・。

実際のマリコはのんびり・・・を通り越して、ボーっとしているのです。

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Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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