第34回 「通訳=イタコ論」
「やっぱりこんな仕事向いてない・・・。もうたくさん、辞めたい・・・。」
そんなふうに思うことってありませんか?通訳という仕事が苦行でしかなくなってしまう時期。わたしも、ひどいときはそれこそ5分おきくらいにそんなことを考えていました。特にパフォーマンスが伸びなくて、スランプ気味のときなど。「なんでこんな仕事やってんの、わたし?」って考え込んで鬱々としていました。
それでも、続けてきた理由があるとしたら、やっぱり「イタコ」の瞬間があるからかなあと思います。
普段通訳をするときは、「言語」を理解して「言語」に置き換えている感じなんです。でも、そうじゃなくてスピーカーの「脳」からこちらの「脳」にダイレクトに伝わってくるときがあるんです。脳がシンクロしているというか、こう、「降りてくる」っていう感じなんですよ。
そういうときは、「わたしって、こんなに語彙の豊かな人間だったの?」って自分でびっくりするくらいパフォーマンスが違います。何かにとりつかれて話している感覚です。メモをとる手も勝手に動くような。まさに霊媒、イタコの領域です。
ただ、残念なことに、そんな瞬間は本当に数えるほどしかないんですよね。『デブラ・ウィンガーを探して』という映画で、ジェーン・フォンダもこういう「瞬間」のことを語っていました。彼女の言う「瞬間」はまたちょっと質が違って、撮影のスタッフやセットなどすべてのものと自分のそのときの芝居がうまく組み合わさって、言い表せないような気分を体験できるという話でした。だけど、それまで50本近い映画で数え切れないほどのシーンを撮影しても、そういう瞬間はやっぱり、8回くらいしかなかったそうです。
たとえ数えるほどしかなくても・・・別の次元に飛び込んだような感覚を味わえるものが、もしかしたら「天職」というものなのかもしれない、と思ったりします。
通訳から転職して巫女さんになるとか。引退した通訳が恐山でイタコとして活躍するとか。そんなのもあり、でしょうか・・・?
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