第27回 インビジブル
「その場にいたけど、いなかった人」
そういう扱いをされることに慣れています。
だって、通訳ですから。機材としか思わないお客さまがいるのにも、とっくに慣れっこです。そんなことでいちいち傷ついていたら生きていけません。
さっきまで一緒のミーティングに出ていたのに、終わったら顔を合わせても素通り。そんなこともよくありました。
外国人に弱いのか、どうしても相手の顔を見ようとせずに、ミーティングの間中ずっと通訳のほうばかり見て話すようなお客さまもいらっしゃいますが。それでも、終わったらまるで通訳が存在しなかったかのようにさっさと行ってしまったり。
「インパクトが薄い顔なのかしら?もっと化粧濃いほうがよかった?それか、なんかものすごい失敗をやらかすとか?あ、そうだ!鼻血通訳だったら絶対に覚えてもらえるわ!」
ときどきそんな余計なことを考えてみたりします・・・。
とはいえ、インビジブルな存在なのも、これはこれでラクだったりします。人としての関わりを求められてないわけですからね。やることをやってビジネスライクに済ませればいいわけですから、いたってシンプルです。
ただ、途中で質問したいことがあったりすると困ります。
「機材なのに、なんで質問しだすんだ!?なんだ、一体?壊れたのか?」
そんなふうに機嫌を損ねるお客さまもいて。憮然として通訳を睨んできたり。お客さまとはいえ、さすがに感じ悪いです。
そんな中でも、ときたま、いるんです!通訳も参加者のひとりみたいに扱ってくれるお客さま。仕事の後などにもいろいろと話しかけてくれたりして。すれ違ったら会釈されたり。
「あれ?えっ!あ、わたし!?」
すみません。慣れないもので。まったく予想していなくて、あやうく無視しそうになるのです。
わざわざ挨拶に通訳のところにやってきてくれたのに。
「どこに行くのかしら?」
なんて目の前に来るまで気付かなかったり。いや、目の前にいても、どこかに向かう途中なのかと思って気付かなかったりするのです。
これじゃ、わたしのほうが「感じ悪い人」みたいです・・・。
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