INTERPRETATION

第25回 狭き門なら

寺田 真理子

マリコがゆく

「狭き門じゃなくて、門がないんです」

字幕翻訳家になるにはどうしたらいいかと尋ねられると、某大御所は、そうお答えになるそうです。

「あの・・・それはあなたが市場独占のために門を閉ざしているんじゃ・・・」

あまりにパワフルなお仕事ぶりに、思わず余計なツッコミをいれてしまいそうですが。実際に字幕翻訳家の方のお話を伺うと、想像以上にきびしい世界。「門がない」というのもうなずけます。

じゃあ、通訳はどうでしょう?

門がないとは言いませんが。こちらもやはり、狭き門。

通訳学校で先生のきびしいしごきをうけてやめていき。現場のストレスに耐え切れずにやめていき。思えばちょっと、死屍累々です。

以前、通訳学校で「このクラスに何年もいるのにずっと進級できない」と悲壮な顔で話していた人がいました。勉強しなければいけないことは山のようにあるし、できる人はたくさんいるし。そんな中で自分が残っていくことなんてできるのか、当然不安になりますよね。

やっと通訳として働き始めても、たとえば社内通訳だったら、そのポジション自体がそんなに多いものではないし。なんだか少ないパイを必死で争っているかのような気になったりもします。

そうすると、どんどん自分が狭いところへ、狭いところへと追い込まれていくように感じる通訳さんや通訳志望者さんもいるのでは?

だけど。狭き門なら・・・乗り越えちゃう!裏門を探す!

そういう発想が、もっとあってもいいんじゃないかと思うんです。

たとえば、新聞を読んでいて、「あ、この業界はこれから国際化が進みそうだなあ。通訳が必要になるような場合も多いかも。必要になるとしたら、どういうところだろう?この団体とか、いまから覚えてもらっておくといいかも!」

そして勝手に通訳が必要になるようなビジネスモデルを構築して、パワーポイントでプレゼンしに行っちゃったり。

「いまならもれなくわたしが通訳でついてきます!」

・・・なんの売り込みなんだかよくわからなくなっていますが。ちなみに、お客さまは、かなり引き気味でしたが・・・。

こんなふうに・・・門ごとぶっ壊す!自分で門をつくる!

それでいいと、わたしは思うんです。それに、普通にくぐるより、楽しいですよ!

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

END