第20回 知ってるもん!
わたしが仕事に持参する資料や通訳メモの片隅には、時々、とても初歩的な英単語が書き取ってあったりします。
もちろん、そういう単語はちゃんと知っていますよ。でも、「聞いてその単語の意味がわかる」ということと、「その単語が自然に口を突いて出てくる」ということには、かなり開きがあるんですよね。
単語が意識の引き出しに入っていると考えてみると、わかりやすいかもしれません。いちばん上の引き出しが、訳すときに使える引き出しだとします。「その単語が自然に口を突いて出てくる」のは、単語がこの引き出しにしまわれているとき。「聞いてその単語の意味がわかる」のは、引き出しの5段目か6段目くらいでしょうか。だから、「もっと上の段にしまわなきゃ!」と、意識化するために書いているのです。
だから、書いてあっても、知らないわけじゃないんですよ。お客さまから見たら、「この通訳はこんな単語も知らないのか?」って、信用をなくしてしまいそうですが・・・。
逐次通訳なら、2段目か3段目くらいの引き出しに入っている程度でも、時間の余裕がまだ多少はあるので、「ポン!」と取り出せることもあります。だけどこれが同時通訳となってしまうと、いちばん上の引き出しにしか手が伸びる余裕がないのです。「なんだか限られた表現をさっきから何度も使いまわしてるわ~」なんて、途中で恥ずかしくなってしまうことがあっても、その引き出しにないものは取り出せないのです。だから、「いちばん上の引き出しにいれておくようにする」しかないんですよね。
日本語の場合でも、「こういう表現は自然に出てこないなあ」というのをよく拾っては書いています。「普段使っている表現に、こういう表現も取り入れたら通訳の幅が広がるかも」と思えるようなものなど。仕事以外に、勉強でセミナーやシンポジウムに行く時もやっています。参加者のなかでひとり、本題とは何の関係もない、とても異質なノートをとっているわたしです。たとえば、以前参加したとあるシンポジウムのノートは、こんなふうになっています。
長丁場になりますが
官僚主義に侵されている
共に手を携えて
問題が露呈
鎮守の森
爛熟
礼賛
社会代謝
どんなシンポジウムだったかは、みなさんのご想像にお任せします・・・。
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