INTERPRETATION

第13回 接続詞のワナ

寺田 真理子

マリコがゆく

通訳のみなさん、だまされちゃダメです!

「しかし」

「・・・だったんですが」

お客さまがそんなことを言ったって、わたしは”However”とも”But”とも訳しません。だって、知ってるんです。その後の話が、「しかし」にも「ですが」にも、全然つながらないっていうことを・・・

「予算もリソースも不足してます。しかし、これじゃあどうにでもできませんよ」

あれ?「しかし、頑張ってやり遂げます」とかいう決意を語ってくれるんじゃなかったんでしょうか?

「3月までに作業完了の予定だったんですが、予定通り完了しました」

あ、完了したんですか、よかったですね。「だったんですが、作業がずれ込んでしまいました」っていうお詫びをするのかと思いましたよ。日本語の「が」は、あいまいですもんね。

みんな、接続詞、いい加減に使いすぎです!

接続詞をきちんと使える人って、びっくりするくらい少ないんですよね。おかげで、いまではどんな接続詞も疑ってかかるようになってしまいました。通訳をすると、疑い深くなる・・・なんて、あながち冗談でもないのです。

「しかし」と言った後にお客さまが考え込んだりしてしまう場面もよくあります。間がもたないので、この「しかし」だけでも訳してつないでおきたいところですが、そうすると十中八九裏切られます。なので、間が持たずともここはぐっと我慢、が正解です。

お客さまによっては、お気に入りのつなぎ言葉があったりします。

「そもそもこれは・・・」

「とはいってもね・・・」

「これはすなわち・・・」

だから、用法が間違ってますから!

このところ増えてきたように感じるのは、これです。

「いや、逆にさあ・・・」

・・・。逆じゃない。どう考えても逆じゃないです、その後に続くお話・・・。結構ロジカルにお話を進めてくれるお客様なのに、このフレーズだけが玉にキズ、というパターンが多いようにお見受けします。

お客さまには、おかしな接続詞の使い方でどうか通訳を当惑させないでいただきたいものです。

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
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『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

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『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

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