INTERPRETATION

第3回 囁きはシャウティング!?

寺田 真理子

マリコがゆく

「ウィスパリング通訳の仕事のはずだったのに・・・」

ウィスパリング通訳って、ウィスパーっていうぐらいだから、「囁く」わけですよね、本来は

できるだけ小さい声でできるほうが、通訳としてはやりやすいですよね。自分の話す声が大きくなりすぎると、それが邪魔になって聴くほうに集中できなくなってしまいます。特に、ウィスパリングの場合、通訳にとってあまりいい環境じゃありません。通訳ブースなどと違って、ちゃんと音が聴きとれるようになっていないので、何十人もいるような会議だと、話し声などがすごく耳についてしまいます。

ウィスパリング通訳をする相手も1人だといいのですが、「2人必要なんで、2人にお願いします」なんていうことがよくあります。「1人も2人もおんなじでしょう?」って、きっとお客さまは思っているはず。でも、違いますよね。

2人いると、やっぱり通訳も音量を上げないといけません。そういう時はその2人になるべくくっついて座ってもらいますが、「ちゃんと伝わってるかな」と2人に対して気を配らないといけないので、集中力もその分そがれるわけです。ウィスパリング通訳もやることは同時通訳と同じですから、極度に集中力が要ります。だから、「そんなところで集中力はできるだけそがれたくない」というのが本音です。

その場での参加者へのウィスパリング通訳に加えて、「電話で参加する人も通訳が必要なんで、お願いします」ということもありますよね。電話だとやっぱり音量を上げないといけないので、できればこれもお断りしたいケースですが。なるべく電話にくっついて通訳して、なおかつその場の参加者にも近寄ってもらって・・・という形で乗り切ります。

でも、時々すごい状態になることがあります。電話での参加者のほか、その場で通訳が必要な外国人が7-8人わたしのまわりにわんさわんさとひしめきます。まるで、おしくらまんじゅうみたいです。こうなるとウィスパリング通訳とはもはやいえない状況・・・。立ち上がって、発言者に負けない大声で通訳する羽目に。

そうです、これはもう、シャウティング

Written by

記事を書いた人

寺田 真理子

日本読書療法学会会長
パーソンセンタードケア研究会講師
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー

長崎県出身。幼少時より南米諸国に滞在。東京大学法学部卒業。
多数の外資系企業での通訳を経て、現在は講演、執筆、翻訳活動。
出版翻訳家として認知症ケアの分野を中心に英語の専門書を多数出版するほか、スペイン語では絵本と小説も手がけている。日本読書療法学会を設立し、国際的に活動中。
ブログ:https://ameblo.jp/teradamariko/


『認知症の介護のために知っておきたい大切なこと~パーソンセンタードケア入門』(Bricolage)
『介護職のための実践!パーソンセンタードケア~認知症ケアの参考書』(筒井書房)
『リーダーのためのパーソンセンタードケア~認知症介護のチームづくり』(CLC)
『私の声が聞こえますか』(雲母書房)
『パーソンセンタードケアで考える認知症ケアの倫理』(クリエイツかもがわ)
『認知症を乗り越えて生きる』(クリエイツかもがわ)
『なにか、わたしにできることは?』(西村書店)
『虹色のコーラス』(西村書店)
『ありがとう 愛を!』(中央法規出版)

『うつの世界にさよならする100冊の本』(SBクリエイティブ)
『日日是幸日』(CLC)
『パーソンセンタードケア講座』(CLC)

END