INTERPRETATION

第58回 Brexit Update! 最終章

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年はいつもと違い、ひっそりと新年を迎えた方が多いのではないかと思います。イギリスではロンドンを含む南東部が三度目のロックダウンに入り、ほとんどの家庭が静かにこじんまりとクリスマスや新年を迎えたようです。グリーン家では、ここ5〜6年は愚息が二人とも大晦日は出かけていて、元旦は二日酔い・寝不足で会話にもならない……という状態が続いていました(苦笑)。それが今年はロックダウンのおかげで(!)出かける場所もなく、一緒に楽しく新年を迎えることができ、まさにthere is a silver lining in every cloudです。

イギリスにとっては、12月31日でEU離脱の移行期間 (transition period)が終了し、元旦は新しい時代の幕開けとなりました。昨年1月31日に正式離脱をした際(参照記事:第44回)には国会議事堂前の広場 (Parliament Square)で独立を祝う会が開催され大勢の人が集まりましたが、今回はこの地域もロックダウンの対象となっており、ひっそりとした幕開けでした。

ハイキャリアの拙コラムでは2015年12月に新語の一つとして紹介(参照記事)して以来、数十回にわたりBrexitを取り上げてきました。当時はGrexit(ギリシャのEU離脱)と同じように消えて忘れられる語になるのかと思っていましたが、ちょうど5年の月日を経て、イギリスはEUから完全に離脱しました。本コラムも「Brexit Update!」としては最終章になります。

EUとの貿易協定は予想通り(!)ぎりぎりまで交渉が続きましたが、無事合意に至り12月30日に英国議会の承認を得て「合意なし離脱 (no-deal Brexit) 」を回避することができました。

では1月1日から何が変わったのかというと、こちらの記事Brexit: Seven things changing on 1 Januaryでは7つの点が挙げられています。この中でも日本のみなさんに関係があるかもしれない移民制度 (5. There’ll be a new UK immigration system) を紹介します。

これまでEU市民はイギリスに自由に入国・滞在し、仕事や学業にも就くことができました。けれども、これからは非EU市民と同様の扱いとなります。就業ビザを得るには、日本人であっても、フランス人であってもポイント制度の適用となり、決められた項目から70点を獲得する必要があります。「一定の英語力(be able to speak English): 10点」「英企業からの正式な採用通知(have a job offer from an approved employer):20点」「熟練技能職 (a skilled job):20点」に加えて2万5600ポンド(約365万円)の年収 (20点) などがあれば必要とする70点を獲得することができます(詳細は政府サイト参照)。ちなみに某日系企業の社内翻訳者のポジションはぎりぎり20点獲得できるくらいの収入レベル、合計で70点、獲得できそうですね。

また日本とイギリスの間では経済連携協定(EPA)が1月1日に発効されました(関連記事)。EUとイギリス、日本とイギリスの両方で貿易協定が結ばれているので日系企業はこれまで通り企業活動を維持することができます。イギリスは、TPP11への参加にも意欲的。日英関係は、これまで以上に密接になると考えられています。今後はGlobal Britainとしての活動・発展を本コラムで取り上げていきたいなと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。

2020年1月2日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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