INTERPRETATION

第38回 2020年代の食のトレンド

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。いよいよ年の瀬が押し迫ってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。2010年代 (the 2010s, twenty-tensまたはtwo thousand  tensと発音)も終わりに近づき、2020年代 (the 2020s, twenty-twentiesまたはtwo thousand twentiesと発音)の幕開けとなります。これからはどんな10年になるのでしょうか? 今回は食のトレンドについて取り上げます。

● 環境問題(the environmental issues)
食の話と環境問題というのは、一見関係がなさそうに思えます。けれども本コラム第27回でも取り上げたように、フードシステム(食料の生産から流通・消費まで)から排出される温室効果ガス(greenhouse gases)は全体の25~30%を占め、畜産による環境破壊は深刻です。植物性食品 (plant-based food) のほうがはるかに温室効果ガスの排出量が少ないため、2020年代はますます肉(特に牛肉などの赤身肉/red meat)の消費量が減ると考えられています。

● 菜食主義(vegetarian, vegan)
ビーガンとは、「完全菜食主義」とも訳されますが、動物由来の食物を一切取らない主義で乳製品や卵だけでなく、はちみつやゼラチンも口にしません。欧米ではビーガンがここ5年くらいで急増しました。このトレンドを受け、ビーガン食を出すレストラン、ファーストフード店、ビーガン専門店、スーパーに並ぶビーガン向けの商品がどんどん増えています。菜食主義は中高以上の女子に多いのですが、最近では、ふだんは肉を食べる人もたまにビーガン食を取るということが増えているようです。私も先日出張先でビーガンレストランに行ってみました。割高でそれほどおいしいとも思いませんでしたが大繁盛していました。この傾向は今後も続くことでしょう。

● 人工肉(artificial meat), 培養肉(cultured meat), clean meat (クリーンミート), fake meat (フェークミート)
色々な呼び方がありますが、幹細胞を培養して作られた肉のこと。これは動物性ですが、動物を殺さないため、環境対策だけでなく動物愛護の視点からも注目を浴びています。現在はまだ開発が進んでいる段階で生産量はわずかで高価。けれども、今後は環境に優しい肉として注目されています。

● 植物性食品(plant-based food)
日本語では「植物由来」や「プラントベース」とも呼ばれているようですが、英語では-baseではなく-based。
日本でもナチュラルローソンなどで販売されているようですが、ビーガンの人たちも食べられるようにゼラチンを使っていないグミや牛乳の代替品 (milk alternatives) として豆乳 (soya milk) 以外にもalmond milk, cashew milk, coconut milk, hazelnut milkなど色んな商品が店頭に並ぶようになりました(参照記事)。Tofu steak(豆腐ステーキ)などplant-based proteinはますます増えると予測されています。

● 鶏肉 (poultry meat) や魚(fish)
鶏肉や魚は、それほど環境負荷も高くなく、健康にもよいと言われているので、2020年代には消費が伸びると考えられています。

以上が欧米の食のトレンドですが、今後このような動きは日本でも高まるのではないでしょうか?

ところでビーガン食の流行のおかげでイギリスでもTofuが入手しやすくなったのはいいのですが、このTofuは日本の豆腐とは名前は似ているけどまったく別の食品と思った方がいいと思います。消しゴムのように固いので箸でつまんだときに崩れる心配はありません。また、もがもがするだけでなく、数カ月日持ちします (Does it sound scary?)。最近はsmoked, basil, curry-mangoなども販売されています。こんなフレーバー付きのTofuを食べてみたいと思いますか?

2019年12月22日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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