INTERPRETATION

第35回 Brexit Update! 年内の総選挙、決まる

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。早くも11月に入り、今年も残すところ2カ月となりました。2019年中に達成したいことがあれば、集中して取り組む時期ですね!

イギリスが2019年中に達成したいことは、やはりBrexit。EUからの離脱ではないでしょうか。少なくとも現政権はそう望んでいます。そして年内の総選挙がやっと決まりました。前回のコラムにて、5つのオプションを検討しました。オプション5の総選挙について労働党は反対していましたが、EUが離脱期限延長を認めたあとは反対する正当な理由がなくなり総選挙支持に様変わり。結局12月12日の総選挙が決まりました (The UK is set to go to the polls on 12 December)。

ではこれから年末に向け、BBCニュースなどで出てきそうな用語を取り上げます。

  1. go to the polls: pollは「世論調査」の意でもよく使われますが、pollsと複数形だと「投票所」の意になります。「投票所に行く」→「投票する」「選挙がある」 また、pollは動詞用法もあり。「(票)を獲得する」「(票)を投じる」「世論調査をする」など微妙に意味が違うので文脈に要注意です。exit pollは「出口調査」
  2. hung parliament: 「宙ぶらりんの議会」「ハングパーラメント」などと訳されますが、hungはhang(吊るす)の過去・過去分詞形。「議会が吊るされている」→「議会が宙ぶらりんになっている」。つまり、「どの政党も過半数を占めることができず、議会の運営がはかどらない状態」を指します。2017年の総選挙では、もともと過半数を占めていた保守党がさらに議席数を増やそうと解散総選挙をしましたが、結局議席数を減らしハングパーラメントになってしまいました。その結果、この2年間議会は何も決められない状態 (dysfunctional) が続きました。ジョンソン首相は、この状態の打開を目指しています。
  3. 不在者投票:postal vote/proxy vote 日本では、期日前投票といって投票日の前に投票に行く制度がありますが、イギリスでは郵便による事前投票(postal vote)、または代理人に投票を依頼するproxy voteがあります。18歳以上に投票権があるので基本的に大学生は有権者ですが、大学生の大半は実家から離れたところで暮らしています。12月12日という投票日は大学生にとっては微妙です。ほとんどの大学がその直後の14日から冬休みに入ります(Most universities break up for Christmas on the 13th)。学生がどちらの選挙区に登録しているのか(両方の登録も可)、12月12日にどこにいるのか、冬休み直前に投票に行くのか、などが話題になります。また、この時期のイギリスは日照時間が非常に短く、寒くて薄暗い日になることは間違いないので、そんな日に一般の人は投票に行くのかが話題になるのも興味深いです。
  4. majority: 「過半数」を取れるかどうかがジョンソン首相にとって極めて重要です。「過半数を獲得する」→ win a majority, 「過半数を獲得できない」→ fail to win a majority
  5. Brexit Party/LibDems: イギリスや米国は「二大政党制 (two-party system)」と言われています。政党は他にはあっても実際に政権を握れるのは二つの党だけで、どちらかの政党が交代に政権を執ります。イギリスの場合は、保守党(the Conservative Party/Tories)と労働党(the Labour Party)です。けれども今回の選挙では元UKIP(イギリス独立党)党首のナイジェル・ファラージ率いる強硬離脱派Brexit Party(ブレグジット党)と、EU残留を公約に掲げるLiberal Democrats(自由民主党、LibDemsと略)がどれくらい議席数を伸ばすのか注目されています。どちらの党も支持者を増やしており、社会の二極化の象徴となっています。

以上、先週に引き続き、Brexit Updateでした。

2019年11月5日

 

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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