第30回 Brexit Update! 英議会の閉会
皆さん、こんにちは。早くも9月、長月に入りました。過ごしやすくなり、何をやってもはかどる季節ではないでしょうか。イギリスにとってはEU離脱の期限がいよいよ「来月末」となりました。そこでBrexit Updateと関連用語を取り上げます。
8月28日、ジョンソン首相が英議会を5週間閉会すると発表し、大きなニュースとなりました。
ここで「閉会」は英語で何でしょう?
一般的にはsuspend(動)suspension(名)ですが、イギリス英語ではprorogue(動、発音prouróug)prorogation(名)も使われます。
EU離脱期限が目前に迫る中、通常の3週間より長く閉会することで議会で協議する時間が限られ合意なしEU離脱(no-deal Brexit)を議会が阻止できなくなる可能性が高まることから批判の声も上がっています。週末ロンドンでは抗議デモが行われました。
ではイギリスの「議会」は英語で何でしょう?
日本の「国会」は diet、米国や中南米ではcongressですが、カナダやオーストラリアなどを含むイギリス連邦ではparliament (発音pɑ́ːrləmənt)。国会議員は a member of parliamentで通常MPと略されます。一人の場合はan MP。スペルはMでも発音は em と母音で始まるので不定冠詞は an となります。
ジョンソン首相は「何が何でも10月31日にEUを離脱する」と繰り返し宣言していますが、「何が何でも」に当たる表現として何が使われているでしょう?
2012年7月、ギリシャ債務危機の真っただ中、世界中がユーロ崩壊を心配していた時にECBドラギ総裁が「ECBはユーロを救うためなら手段を問わない (we will do whatever it takes)」と発言し、ユーロを救ったと言われています。ここでは「何が何でも」に当たる表現はwhatever it takes。頻出表現で、使えると便利なフレーズの一つです。
ジョンソン首相はよく独特の表現を使います。ここでの「何が何でも」は「合意あるなしにかかわらず」という意でもあるので with or without a deal ということですが、同首相は「必ず10月31日に離脱する」を強調するのに do or die(やらなければ死んでしまう→死ぬ覚悟で/決死の行動を取る)や no ifs or buts(”もし” や ”だって” などの言い訳は認めない→つべこべ言わない)という表現を首相就任時に使ったことから、これらの表現はその後よく引用符つきで報道されています。no ifs or butsは「つべこべ言わないで」というニュアンスでふつう「親が子に」、または「上司が部下に」など目下に向かって使われる表現です。簡単な言葉の組み合わせですが、場に合うようスムーズに訳すのは意外に難しいのではないでしょうか。
英議会は9月3日に再開され、その翌週から10月14日まで閉会されることになっています。内閣不信任決議 (a vote of no confidence) が可決され解散総選挙 (general election) になる可能性もわずかながら残されています。
というわけで、Updateとは言いながらも結局どうなるのか不透明な状況は続いています。
引き続き、イギリスからの政治ニュースに注目です。
2019年9月1日
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