第15回 週末に開催された二つのコンテスト
皆さん、こんにちは。今日は5月18日(土)に開催された二つのコンテスト(一つは決勝、もう一つは予選)について取り上げます。
まずはEurovision Song Contest 2019。年に1度開かれる国別対抗の歌謡祭です。日本の歌番組では大晦日に欠かせない紅白歌合戦に一番近いと思いますが、同歌謡祭では男女の垣根はなく、国別に競い合います。生放送の歌番組が国境を越えて放送されるという、ちょっとしたお祭り騒ぎで、ホームパーティをしながら観戦(?)する人も多いようです。今年はマドンナがゲスト出演しましたが、開催地がイスラエルだったので、パレスチナとの紛争を理由に出演辞退を要求する声も上がっていました。
けれどもマドンナは
“I’ll never stop playing music to suit someone’s political agenda, nor will I stop speaking out against violations of human rights wherever in the world they may be.”
(世界のどこであったとしても、私は誰かの政治的なアジェンダを満たすために演奏を止めたりなんてしないし、人権侵害に対して声を上げるのを止めるつもりもない)
と言って堂々と参加されました。そして最後にパレスチナとイスラエルの国旗を背に掲げたダンサーが互いに腕組みをして登場。マドンナはWAKE UPと言って締めくくり、平和に向けたメッセージを送りました。還暦を迎えたマドンナですが、今でも美しくパワフル(羨望のまなざし…)。
さて、「ユーロビジョン」というタイトルから参加国はヨーロッパ諸国と思われることでしょう。けれども「欧州/ヨーロッパ」といっても欧州連合(EU)、欧州経済領域(EEA)、シェンゲン圏(Schengen Area)、ユーロ圏(Euro Zone)、欧州評議会(Council of Europe)、関税同盟(Customs Union)など、いくつものグループに分かれていて、どの国がどのグループに入っているのかを正確に理解するのは非常に困難です(こちらの記事、下図参照)。
この中で一番大きなくくりは欧州評議会ですが、ユーロビジョン・ソング・コンテストの参加国には、イスラエルやロシア、トルコなど欧州以外の国も多く含まれています。主催が欧州放送連合(EBU)なので「ユーロ…」と名付けられていますが2015年からはオーストラリアも参加するようになり、ますます「ユーロ/欧州」の定義について首をかしげる人が増えました。
今年は41カ国が参加しましたが、18日の決勝戦(Grand Final)に残ったのは26カ国で、優勝はオランダ。優勝国は翌年の歌謡祭を開催します。気になるイギリスはなんと最下位(涙)。一応、イギリスでもホームパーティをする人は結構いたみたいですが、勝ち負けにかかわらずパーティを楽しまれたことでしょう(もともと、期待していないので。。。)
さて、18日に行われたもう一つのコンテストというのは、日本会議通訳協会(JACI)の同時通訳グランプリ予選です。日英、英日の両方向の同時通訳を規定時間内に録音し、データ送信後、審査されます。予選は自宅から受けられるので、海外からも参加できます。イギリスでは午前3時から4時という時間帯だったので若干不利ではありましたが、それでも教え子の二人(キーホー智栄子、溝田樹絵)が参加し、それぞれ社会人部門と学生部門で見事予選通過されました。
お二人ともロンドンメトロポリタン大学会議通訳修士課程とグリンズアカデミーの両方で通訳訓練を受けました。キーホーさんとは3年、溝田さんとは1年あまりのお付き合い。また昨年のファイナリストの一人、志村理恵子さんもグリンズアカデミーで2年弱同通トレーニングを受けたあと同通グランプリにチャレンジされました。
3人とも、もともと優秀だったの加え、常にフィードバックを前向きに受け入れ、コツコツと練習を重ね、きちんと課題に取り組み、着実に通訳スキルを向上させていきました。受講生の成長を実感できることは指導者としてかけがいのない喜びであり、その過程で自分自身も成長していきたいと願っています。
大学院も個人運営のグリンズもレベルの高い受講生が集まってくださり、「大手通訳学校卒業」「通訳歴20年」という方も珍しくありません。最初のころは「私なんかが指導できるのかな」と不安でした。けれども、自分にできることは最大限にオファーし、後は切磋琢磨の環境づくりをすることでお互いから学びあえるプラットフォームを確立することができました。グリンズ精神とは「ニッコリ笑顔で切磋琢磨(Work together, Grin together and Go further)」です。そのプラットフォームに貢献してくださる受講生の皆さんには本当に感謝しています。
6月9日に東京外大で開かれる本選には応援に行くつもりで楽しみにしています。入賞にこだわらず、ファイナリストの皆さんがそれぞれ自分のベストを尽くし、納得できるパフォーマンスをなさり、次のステップアップにつなげられることを願っています。
2019年5月20日
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