INTERPRETATION

第4回 日EU経済連携協定(EPA)発効

グリーン裕美

国際舞台で役立つ知識・表現を学ぼう!

皆さん、こんにちは。今週は、2月1日に発効になった日EU・EPAを取り上げます。先週は、ニュースでも話題になったり、日本ではヨーロッパからの輸入品の値下げ商戦が行われたりしているとかでご存知の方も多いかと思います。

まず日EU・EPA(日欧EPAとも)を英語で言うと、The Japan – EU Economic Partnership Agreement。2018年7月に署名(sign)され、2019年2月1日に発効(take effect, become effective)しました。

これにより、ほとんどの食料品や工業製品などの関税が撤廃され( the tariff is to be eliminated)、世界のGDPの約3割、貿易額の約4割を占める世界一の自由貿易圏 (the world’s biggest free trade zone with 30% of the world GDP and 40% of world trade)が誕生しました。

このトピックで頻出の表現を紹介します。

1.人口6.35億人(635 million people)
EU圏の人口と日本の人口を合わせた人数として、この数字がよく出てきます。キリのよい数字として6億人(600 million)も頻出。通訳現場では数字換算をしなくてもすっと「6億<>600 million」が出るといいですね。EUだけの人口の話では5億(500 million)がよく出てきます。

2.ルールに基づく貿易(rules-based trading system)、自由で公正な貿易(free and fair trade)
WTO(世界貿易機関)協定を守っていない国々、保護主義に対抗したメッセージ。

3.保護主義(protectionism)
関税(tariff, customs duties)引き上げや輸入割当(quota)などで自国の産業を保護しようという国がある一方で、日本やEUはEPAを早期発効することにより、世界に保護主義反対のメッセージを送っています。

4.関税を撤廃する(to eliminate)引き下げる(to reduce/cut)
将来的に輸入品にかかる関税をEUが約99%、日本が約94%撤廃するとのこと(The rate of import tariff elimination, the percentage of tariffs eventually reduced to zero, is 99% on an item basis for the EU and 94% for Japan.)

5.地理的表示(geographical indications, GI)
地理的表示保護制度とは、産地名などを含んだ特産物の名称(GI)を知的財産として保護する制度。ヨーロッパのGIで良く知られているのはシャンペン。発泡性のあるワインをすべて「シャンペン(シャンパン、シャンパーニュ)」と呼んではいけません! 値段が高ければ「シャンペン」というわけでもなく、フランスのシャンパーニュ地方で作られるスパークリングワイン(発泡性ワイン)だけが「シャンペン(Champagne)」と名乗ることができます。ここ数年、イギリスでも和牛ブームが起きていますが、「神戸牛」はGIとして保護されます。イギリスのレストランでもKOBE BEEFを見かけることが増えることでしょう(関税がなくても高くて口にすることがなさそうですが…… 実は松阪出身ですが松阪牛をほとんど食べたことがないです)。

6.個人データ保護(privacy protection)
昨年、EUで一般データ保護規制(GDPR)が発効され、個人情報のEU域外への移転に関するルールが厳しくなりました。今後、EUと日本の関係が密接化するにあたり、日本がEUに基準を合わせることで、日本とEU間での個人情報のやり取りが円滑化することが予想されます。

以上、先週発効された日EU・EPAについて取り上げました。イギリスの店では、日本製品・産品の特売はまだ見かけていませんが、日本ではチーズやワインの特売が早速始まったと聞いています。国際レベルでの取り決めが日常生活に影響があると、国際ニュースを学ぶのがより楽しくなるのではないでしょうか。

ヨーロッパで日本からの輸入品が増えて、店頭に並ぶのを楽しみにしています。

2019年2月4日

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記事を書いた人

グリーン裕美

外大英米語学科卒。日本で英語講師をした後、結婚を機に1997年渡英。
英国では、フリーランス翻訳・通訳、教育に従事。
ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。
元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。
英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
2018年ITI通訳認定試験で最優秀賞を受賞。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議(UN、EU、OECD、TICADなど)、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。
向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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