INTERPRETATION

Vol.25 「まだまだ反抗期、努力はするけど我慢はしない」

ハイキャリア編集部

通訳者インタビュー

【プロフィール】
二宮麻里子さん Mariko Ninomiya
中学卒業後、単身渡英。英国国立ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ政治学部政治経済学科卒業。イタリアに1年間滞在後帰国、スウェーデン通信社東京支局入社、通訳翻訳兼コーディネーターとして働く。数社でのインハウス通訳業務を経て、2004年よりフリーランスに。現在はフリーランス通訳翻訳者として、様々な分野で活躍中。

Q. 語学に興味を持ったきっかけを教えてください。

12歳の時に、親友がお父さんの仕事の都合でイギリスに転居したんです。その夏、彼女を訪ねてロンドンまで遊びに行ったのがきっかけで、英語とイギリスに興味を持ちました。生まれて初めて行った海外、そこで耳にした外国語の響きが面白くて、またいつか絶対ここに来てみたい! と思ったんです。

Q. 中学校卒業後に、単身渡英されたのですね。

親は驚いていました(笑)。一人で「絶対行く!」と言い張って聞かなかったんです。まだ早いんじゃないかと言われたんですが、言い出したら聞かないので、ついに諦めたようです。
小さい頃から集団行動が苦手だったんです。自分が本当にやりたいと思ったこと、興味を持ったことに対しては、一生懸命取り組みますが、「皆がやっているから」という理由で興味のないことを無理やりやらされるのは嫌だったんです。「我慢」はしたくないけれど、「努力」は好きです。私の場合、その「我慢」の中には、皆さんが「努力」だと思っていることも入っているのかもしれませんが……。自分でも損な性格だとは思っているんですが、子どもの頃から変わっていません。

Q. イギリスでの生活は? 

合計8年間いたのですが、帰国後SMAPを知らないことで友達にバカにされました(笑)。成田エクスプレスにびっくりしたことも覚えています。
英語は相当苦労しました。渡英当時、何の勉強もしていなかったので、授業を受けてもさっぱり分からないわけです。家に戻ってから、「今日は何についての授業だったんだっけ?(笑)」と考えることもよくありました。人間追い詰められたらやるんですよ。自分の好きなことだったので、つらいとは思いませんでした。
サッカーチームのキャプテンになったこともあります。リーグ内ミーティングに参加すると、他チームのキャプテンは全てイギリス人です。私一人外国人で、おじけづいてしまいましたが、無理にでも話さないと自分のチームが損するわけです。こういう環境にいたせいで、だんだん慣れていったのかもしれません。

Q. 大学卒業後は?

ずっと英語圏で暮らしてきたので、次は「言葉を変えてみたい」と思ったんですよ。
ローマに1年間滞在しました。最初は語学学校に行き、お金がなくなってきたところで、履歴書を作っていろんなところに配ったんです(笑)。昼間は現地のアパレルメーカーで働き、夕方からは所属していたサッカーチームでプレーしました。

Q. 帰国後、通訳者になったきっかけは?

イギリス企業からオファーを頂いたんですが、一度日本に帰ってみるのもいいかなと思ったんです。実際帰ってみると、窮屈でたまらなくて、早くイギリスに戻りたいと思っていたんですが、スウェーデン通信社で働き始めてから楽しくなったんです。何も知らないままに、取材や通訳翻訳を担当し、この仕事って面白いかもしれない! って。
何となく通訳者になってしまったので、全てOJTで覚えました。当時のメモを見ると笑ってしまいます(笑)。学校に行っていれば、いろんなことを効率的に勉強できただろうなと思いますが、第一回目のインタビューで、王みどりさんが学校に行ったことがないとおっしゃっていたのを読んで、自分を鼓舞させています。

Q. 社内通訳時代の、面白ハプニングは?

インハウス通訳時代、通訳翻訳以外のことを頼まれることも多かったです。今でも思い出して笑ってしまうのが、「お犬様事件」です。上司が帰国する際、日本で飼っていた犬も一緒に連れて帰ることになったんです。検疫や空港での書類記入など、いろんな作業が発生しますよね。「麻里子、成田空港まで犬を送り届けてくれ」と、私の出番がきました(笑)。お犬様と一緒に成田まで行ったことを覚えています。海外出張時、犬の面倒を見てくれと言われたこともあります! 私のアパートは動物禁止で……と伝えると、「わかった! じゃあ麻里子、君がボクのマンションに泊まってくれ。会社も近くなるし、ボクも犬もハッピー、君もハッピーだね!」と(笑)。今だから笑える話ですが、当時は何だかなぁと思っていたこともありました。

Q. いくつかのインハウスを経て、フリーランスになったんですか。

社内通訳の契約が終わる頃、単発の仕事をたくさん頂いたことから、自然にフリーランスになったんです。フリーになろう! と思ったわけではなく、お仕事を頂くままに来てしまったというか……。今の方が断然楽しいです! 毎回いろんな分野のお仕事を頂くので勉強になりますし、各分野の専門家の話が聞けるのはとても嬉しいです。

Q. ブリティッシュアクセントで有名だと伺いましたが。

そうなんですよ。クライアントにはアメリカ英語をお話になる方が多いので、他の方と交代して私が通訳し始めると、ぎょっとした顔をされる方もいらっしゃいますね(笑)。あまりにもイギリス英語だからだと思いますが……。お陰ですぐに顔を覚えて頂けるという利点はあります。
実はアメリカ英語が苦手なんです。表現も、アクセントも全然違うので、例えばカリフォルニアからいらした方がお話になる時なんかは、ものすごく注意して聞かないといけません。簡単な言葉でも、ふと考えてしまうことがあります。日本に戻ってきたばかりの頃は、本当にに苦労しましたが、随分鍛えられました。今でも、BBCを聞きたいところを我慢して、CNNを聞いています!

Q. プライベートは?

バレエのレッスンに通っています。昔から舞台を観るのは好きでしたが、先月からレッスンも受け始めました。ずっとサッカーやフットサルなどスポーツ畑だったものですから、私がバレエを始めたというと、皆笑います(笑)。サッカーをやるときは、短パンにヘアバンドで走り回っているんですよ! 今日持ってくればよかったですね。
「現在読書中」

Q. 今後も通訳者を?

そうですね。何でもそうですが、どうせやるんだったらうまくなりたい。臨機応変にいろんなことに対応できたらと思います。

Q. もし通訳者になっていなかったら?

イギリスに戻っていたと思います。今の生活は快適ですが、通訳をしていなければ、日本にはいなかったと思います。両親は私が日本にいるので喜んでいますが、当の本人はまだまだ反抗期が終わっていません(笑)。
いずれにしても、会社の中で働くよりも、自分で何かをやっていく方が合っていると思います。努力はするけれど、我慢はしません。ワガママですみません!

Q. これから勉強する方へのアドバイスをお願いします。

無駄なことは一つもないと思うんですよ。通訳以外のことをやっていても、絶対に役に立ちます。どんな些細なことでも。例えばサッカーをやっていると、ワールドカップの話になったときに、すごく役立ちますよね。逆に私の場合、野球やゴルフだとちんぷんかんぷんなんですが(笑)。趣味であっても役に立つこともあるし、無駄なことは何もありません。近道もなければ、回り道もありません。がんばってください!

<編集後記>
すかっとした青空のような方でした! 自分をしっかり持っているからこそ、輝いていらっしゃるんだと思います。プライベートもバレエにサッカーと素敵。二宮さんにとって、通訳という仕事はまさに天職!

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ハイキャリア編集部

テンナイン・コミュニケーション編集部です。
通訳、翻訳、英語教育に関する記事を幅広く発信していきます。

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