Vol.12 「語学・演劇・自己表現」
【プロフィール】
白石哲也さん Tetsuya Shiraishi
第11回でインタビューさせて頂いた白石哲也さんの「その後」を追いかけました。いつか語学・演劇・自己表現の3つがつながる時が来るとおっしゃっていましたが、オーストラリアのNIDA(The National Institute of Dramatic Art Sydney, Australia ) への入学が決まったそうです! 超難関なオーディションをパスし、夢を現実のものとした白石さんに再びお話を伺いました。
Q. NIDAについて教えて頂けますか。
メル・ギブソン、ケイト・ブランシェットといった、演技派俳優を輩出していることで有名な世界屈指の演劇学校です。舞台を目指す人にとっての登竜門のような場所と言えばいいでしょうか。アクティング、デザイン、テクニカルプロダクション、ボイススタディなど、演劇に関する様々なコースが設けられています。1年に1回行われる入学オーディションには、数千人の応募があり、その中で数十名のみ入学を許可されるという厳しいものです。
Q. オーディション受験から合格までの経緯を教えて下さい。
去年は1次試験で不合格になったんですよ。今回はかなり準備して行きました。1次試験は2分間のモノローグ2つが課題です。1つはシェイクスピアの作品から、もう1つはコンテンポラリーをやるという決まりがあります。舞台から1つのシーンを抜き出し、登場人物の独白をやるのですが、もちろんスクリプトはありません。2次-4次も同じ内容で、だんだん人数が絞られていきます。試験終了後、20分ぐらいすると結果が出るんですよ。アクティングコースは、残念ながら第4次試験(ファイナル)を通過することが出来ませんでしたが、ボイススタディコースでは最終合格者6名の中に入ることができました!
Q. 人生を変える出会いがあったと伺いましたが。
ビル・ペッパーという先生なんですが、オーディション終了後に「君の演技に魂を感じた」と言われたんです。ラッセル・クロウやケイト・ブランシェットなどを教えていた先生で、日本から来た僕に興味を持ったのか、いろいろためになるアドバイスをしてくれました。ボイスコースを受験したのも、彼の薦めがあったからなんです。日本に帰るまで毎日レッスンを見てあげよう、と言われた時には本当にびっくりしました。彼とは生涯の師弟関係(友人関係とも言えます)が築けたと思っています。
Q. 日本人だということで、何かハンディはありましたか?
どうしてオーストラリアに来たのか、全くバックグラウンドが違うのに、なぜ演技をやろうと思ったのか、30歳を過ぎているのに遅いスタートだとは思わないか等、いろんな質問をされました。受験者のほぼ全員がネイティブだったので、日本人の僕は珍しかったんだと思います。英語が聞き取りづらいという評価もありました。普通に英語を話すのとは違い、演じる際には、stressを置く場所が非常に重要になってくるんです。流れも非常に大事なので、違うところで切ってしまうと、伝わらないこともあります。こればかりは、日本で勉強できることではないなと思いました。
僕はアメリカで英語を覚えたので、シェイクスピアをやった時には、THなどの発音を厳しく指摘されました(笑)。
Q. ボイススタディコースでは、どのようなことを学ぶのですか?
正しい声の出し方、解剖学、俳優達へのボイストレーニングのやり方などです。解剖学は、声帯を守るためにも知っておく必要があるんでしょうね。とにかく声に関すること全てです。ビルに教わるまでは、演技に自信がないせいで、わざと大きく動こうとしたり、過剰に表現しようとしがちだったんです。例えば、顔をしかめてみて、相手に分かりやすいように演技していたというか。「声で演技をしなさい」と言われて気づいたんです。派手なアクションは、全体の演技が薄くなってしまう。それよりも、自分の内側から声を出して、表現することの方が重要なんです。
Q. 今後のプランは?
今は何でもやりたいと思っています。声優もいいと思いますし。将来的には、演技を評価される俳優になりたいです。これから学ぶことはたくさんありますし、相当の覚悟が必要でしょうね! しばらくは、通訳・翻訳の仕事から離れることになるかもしれませんが、自分を信じてがんばります。今の友達や、僕を支えてくれている人たちとの関係も、大切にしていきたいと思っています。
<編集後記>
「オーディション受けてきます!」というメールを頂いてから数週間後、「合格しました!」とのお知らせが届きました! 舞台俳優への一歩を踏み出した白石さん、スクリーンデビューも間近なのではないでしょうか。更なるご活躍をお祈りしています!
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