INTERPRETATION

第315回 「ハラハラしながら待つ」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

wait for the other shoe to drop ハラハラしながら待つ
He took the promotion test last week.  He is waiting for the other shoe to drop. (彼は先週、昇進試験を受けました。結果をハラハラしながら待っています。)

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今回ご紹介するwait for the other shoe to dropは主にアメリカで使われる表現で、「ハラハラしながら待つ」という意味です。文字通り訳せば、「もう一方の靴が落ちるのを待つ」です。なぜこれが「不安になりながら待つ」という語義になったのでしょう?

調べたところ、これは20世紀初頭にさかのぼります。当時のニューヨークは空前の建設ラッシュ。アパートがどんどん建てられていました。その構造や間取りはほぼ同じ。つまり、自分のベッドルームの真上の階も、他の住人の寝室でした。西洋で靴を脱ぐのはベッドルームですので、片方を脱げば、間もなくもう片方も脱ぐことになります。日本のように玄関で揃えて脱ぐというよりも、一足ずつ足から取り外して床にポンと置くイメージです。よって、「いつ落ちてくるかハラハラする」という状況だったのですね。

ちなみに「靴べら」は英語でshoe hornです。かつて靴べらは動物の角(つの=horn)を削って作っていたため、この表現になりました。一方、イギリスではゴム製の長靴をWellington bootsと言います。こちらは19世紀のウェリントン侯爵が由来です。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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