INTERPRETATION

第155回 「忍耐の限度を超えさせるもの」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

the last straw that breaks the camel’s back (忍耐の限度を超えさせるもの)

To tell the truth, my daughter’s rebellious attitude yesterday was the last straw that broke the camel’s back.

(正直なところ、昨日の娘の反抗的な態度は忍耐の限度を超えさせるものでしたね。)

「忍耐の限度を超えさせるもの」を英語ではthe last straw that breaks the camel’s backと言い、私が初めて遭遇したのはCNNのスポーツニュースでした。私はオンエア中、珍しい表現が出てくるとなるべくすぐにメモをするようにしています。本番中は辞書を引く暇がないため、どうしてもわからない時は文脈から推測して訳さざるをえません。その悔しさをバネに次につなげていくということを繰り返していくのです。ことばは無限にありますので、このようにして通訳者は学び続けていきます。

さて、なぜこのフレーズでは「ラクダ」が出てくるのでしょうか?実は「最後の一本のわらが重荷を積んだラクダの背骨を折る」ということわざから来ています。インターネットで調べたところ、語源はアラブのことわざ、旧約聖書、17世紀の表現などまちまちです。

ところでcamelを辞書で引くと「ヒトコブラクダ」はArabian camelあるいはdromedary、「フタコブラクダ」はBactrian camel、一方、ラクダの「鳴き声」はgrunt、「こぶ」はhumpです。また、ラクダは「従順、節制、愚かさ」などを象徴します。ちなみにhorseは「従順、高貴な動物」として重宝されていますが、同時に「好色、愚かさ」の象徴でもあるそうです。学習者向け辞典を読んでみるとこうした解説があるのが楽しいですね。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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