INTERPRETATION

第3回 断腸の思い

柴原早苗

すぐ使える英語表現

She made a gut-wrenching decision to end her treatment.

彼女は断腸の思いで治療を止める決断を下しました。

 2001年12月7日、アメリカのエドワーズ元上院議員の妻、エリザベスさんががんで亡くなりました。61歳でした。エドワーズ元上院議員は2004年の大統領選挙に立候補。エリザベスさんはその直後に乳がんと診断され、長年にわたり闘病生活を続けていたのでした。転移ゆえに助かる見込みがないと悟ったエリザベスさんは、亡くなる直前に断腸の思いで治療をやめたのだそうです。

 gutとは「消化管、腸、胃」、wrenchは「ねじり、ひねり」のことです。工具の「レンチ、スパナ」もwrenchです。日本語の「断腸の思い」はもともと中国の故事から来た表現で、「子を失って悲しみのあまり死んだ母猿の腸がずたずたになっていた」という話から生まれました。

 一方、上記の英語表現はどちらかというとインフォーマルな言い回しです。heartbreaking decisionの方があらゆる場面で使えるようです。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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