INTERPRETATION
第226回 「野心的過ぎる」
a bridge too far (野心的過ぎる)
I think the government’s plan would be a bit of a bridge too far. (政府の計画は、ちょっと野心的過ぎると私は思いますね。)
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今回ご紹介するa bridge too farという表現。私が初めて出会ったのは、放送通訳現場でした。トランプ政権でコロナウイルス対策の陣頭指揮をとる国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がこのフレーズを用いたのです。「秋学期までにワクチンを開発するという計画は野心的過ぎる」という文脈で述べたものでした。
この表現が出てきた際、私は大いに戸惑いました。「橋」「遠すぎる」という辞書的な意味を羅列したところで埒が明かないからです。このような時は、画面に映るファウチ所長の表情と、前後の文脈で何とか類推するしかありません。確か私はこのとき「あまりにも早すぎる考え」と訳したと記憶しています。ただ、自信はありませんでした。
ネット上の英和辞典や手元の電子辞書にもこの語義は出ていなかったため、さらに検索したところ、この表現は1977年のアッテンボロー監督による映画作品名「遠すぎた橋」と同一でした。この作品は第二次世界大戦を描いたもので、連合軍のパラシュート部隊が降下作戦を実行したものの、ドイツ軍に敗れた様子が描かれているそうです。もしこの映画を見ていたら、内容から推測して「無謀な作戦」「大大的過ぎる」といったことが訳語として出てきたことでしょう。中身を知ることがいかに大切かを痛感させられた、今回の表現です。
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