INTERPRETATION

第189回 「とどめを刺すもの」

柴原早苗

すぐ使える英語表現

the final nail in the coffin (とどめを刺すもの)

We should review the detail carefully. Otherwise, it could be the final nail in the coffin. (詳細を慎重に見直すべきでしょう。さもなければ、とどめを刺すものにもなりうるのですから。)

「命取りになるもの、とどめを刺すもの」を英語ではthe final nail in the coffinと言います。coffinは「棺」、nailは「くぎ」です。「棺の蓋に打ち込む最後のくぎ」というのが文字通りの訳となります。残された一本を打つことで、いよいよおしまいという意味になるわけです。なお、coffinは「納棺する」と動詞でも用いることができます。

死や棺など、一見タブーに思われる単語ですが、英語では意外と慣用句になっています。たとえばbe death on … は「薬などが病気によく効く」「名人である」という意味ですし、dead and buriedは「議論などが決着をみた」ということです。drop-deadは「人目を惹くほど、派手に」ということで、たとえばdrop-dead beautifulは「惚れ惚れするほど美しい」です。1999年には”Drop Dead Gorgeous”という映画が公開されました。邦題は「わたしが美しくなった100の秘密」です。

ところで放送通訳現場では著名な方の訃報が入ってくることもあります。coffinもよく出てくる単語です。ただ、私にとって「棺(ひつぎ)」は実のところ言いづらい単語です。「羊(ひつじ)」と音が非常に似ているからなのですね。いつも以上に緊張します。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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