INTERPRETATION

第28回 兼用できるか考える(その1)

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

このところ続いていた片づけも一段落しました。先日読んだ近藤麻理恵さんのインタビューには「捨てる物よりも、『取っておきたい物』について考える」とあり、あらためてなるほどと思っています。そこで今回は私自身が「取っておこう」と考え、かつ他の用途にも兼用できる物についてご紹介しましょう。

1.折り畳み傘
私が持っているのは日傘・雨傘兼用です。ポイントは色がベージュであること。どんな服にも合わせられます。

2.黒のビジネスバッグ
通訳の仕事をしているとたくさんの書類が入るバッグが必要です。これまで色々と試してきましたが、最近ようやく落ち着いたのが黒のショルダータイプ。よく就職活動中の学生さんが持っています。なるべく本体が軽めの物を購入しました。
以前は男性がよく持っている、手で持つタイプを愛用していたのですが、書類で重すぎて手首から先が疲れてしまったのです。ところがショルダータイプの場合、肩にかけて腕で体にバッグを押さえるようにして持つことができます。これで大分楽になりました。
黒にしたのは冠婚葬祭でも使えるようにするためです。女性の場合、特に喪服とセットで使うハンドバッグだと中に物がほとんど入りません。けれどもショルダータイプのビジネスバッグであれば、葬儀での場でも使えます。

3.辞書
私は紙の「ジーニアス英和辞典」を愛用しています。本書には語義だけでなく、文法の説明も出ているので、文法書として兼用することもできます。aやthe、giveやgetのような基礎的な単語をあえて引き直し、文法項目も通読することで、忘れかけていた文法をおさらいすることができるのです。
一方、独学で続けているフランス語も同じで、「クラウン仏和辞典」を文法書としても使っています。巻末には詳しい仏語文法や不規則動詞活用表などがあり、書き込んだり何度も読み直したりすることで、「マイ辞書」として愛用中です。

4.スポーツタオル
マラソン大会に出場するたびにいただくスポーツタオル。フェイスタオルより一回り大きく、縫製も丈夫です。我が家ではこれをバスタオルや足ふきマット、台所用のお手拭などに使っています。毎日洗濯できるので衛生的です。

5.食器ふきん
現在愛用しているのはドビー織食器ふきんです。我が家は水切りカゴを撤去したので、食器を洗ったらすぐにふきんで拭くようになりました。その際、ドビー織はケバがたたないので、すぐに拭いても大丈夫。乾きも早いので重宝しています。ちなみに食器用だけだけでなく、台ふきんとしても活用しています。「台ふきんはこのタオル」「食器拭きはこちら」と今までタオルを分けていたのですが、統一したことで「洗濯→畳む→しまう」が楽になりました。

次回も5つのアイテムをご紹介します。

(2011年6月27日)

【今週の一冊】

「理科系の作文技術」木下是雄著 中公新書 1981年

先日読んだ井上ひさしさんの本で紹介されていた一冊。理系向けの本であるが、奥付を見ると初版は1981年。2002年の時点ですでに46版となっているベストセラーだ。読み進めてみると、文章を書く人誰にでも役立つ内容がぎっしり詰まっていた。

冒頭でいきなり出てくるのがチャーチルの発言。第二次世界大戦中、おびただしい量の文章を読んでいたチャーチルは、部下たちに「読みやすい文章を書くように」と命じる。それがひいてはイギリスの戦勝へ結びついたと筆者は述べている。

今回印象的だったのは、「はっきり書く」「能動態で書く」の2点。いずれも読みやすい文章にするためのポイントだ。特に日本人の場合、「~と思われる」「と考えられる」など、あいまいな表現を使うことが多い。そのため、言いたいことがぼやけてしまうのである。しかもその習慣で英文を書こうとすると、英語もIt is thought thatのようになってしまう。この場合、ネイティブは「人々は一般的に~と考えている」ととらえる。筆者個人が「~と思う」を受動態で「思われる」と書くのと、ニュアンスが異なってしまうのである。

もう一つは「~させていただく」について。木下氏はこうした「丁寧すぎる言い方も、学会講演にはふさわしくない」とバッサリ。なぜなら学会は経験や年齢の差は関係なく、平等に学問を追求するからである。近年、「~させていただく」が頻繁に使われるようになり、私自身違和感を覚えていたので、やはりTPOに応じた使い方を改めておさらいしようと思っている。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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