INTERPRETATION

第27回 片づけで発見したこと(その2)

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

先週は片づけを通じて感じたことをご紹介しました。今回もその続きです。

(4)使わないで放置したままの物:
我が家にとって「放置品ナンバーワン」は子どもの初代自転車です。小さくなってしまったものの、思い出も詰まっています。昨年秋の引っ越しの際、粗大ゴミに出そうとも思いましたが、清掃局に連絡したところですぐに引き取ってもらえるとは限りません。そのまま引っ越し先に持ち込むことになりました。けれども転居後もマンションの自転車置き場を占領してしまう始末。ただでさえ自転車置き場は混み合っているのに、使わない自転車を置かせてもらって申し訳ないなあと思いながら半年が過ぎたのです。ホコリもたまるばかりでした。
結局、今回の片づけを機にきれいに磨いてチャリティーショップへ寄付することにしました。娘が初めて補助輪をつけて乗った赤い自転車。今度は誰かが自転車に乗れる喜びを感じてくれたらと思っています。

(5)ノベルティーグッズ:
「本当にその企業のロゴ入りグッズが使いたいのだろうか?」そう自問自答しながら片づけを進めました。たとえばボールペン。書きづらいしロゴも好きではない。でも捨てるのはもったいない。では「もったいない」という感情だけで嫌々使うのでしょうか?「いつか使わなきゃ」と思いながら机の引き出しを占領させるのでしょうか?
自分にとっては縁がなかったもの。そう思いながらチャリティーショップ向けの箱に入れていきました。

(6)色々なカバー:
我が家はこれまでトイレットペーパー、冷蔵庫の上、ファクスの上にカバーをつけていました。いずれもホコリよけです。けれども「カバーをかけた」ことに安心してしまい、今度はカバーそのものにホコリがたまっていたのです。しかもよく見るとカバーの布そのものがくたびれています。
今回の片づけでは思い切ってカバーを撤去しました。ホコリが目立つようになったら、すぐに拭き掃除をする。ティッシュで拭うだけでも十分ホコリは取れます。頻繁にやることが肝心なのでしょうね。

(7)「情報の多さ」を撤去する:
こんまりさんの本によれば、包装シールや空き箱に書かれている情報が部屋の中にざわざわ感を作り出しているとのこと。たとえば我が家は押し入れの中にミカンの空き箱を収納用に置いているのですが、押し入れを開けるたびに「みかん」「新鮮」「直送」などといった言葉が目に入ってきます。
他の部屋も見渡してみたところ、洗面台の棚には「BLマーク認証」という意味不明のシールがありました。こうしたシールやラベルを思い切って撤去したところ、無意識に目に入る情報が減り、ずいぶんすっきりしました。

(8)そのストック、本当に必要?:
たとえばトイレットペーパー。今まで何の迷いもなく12ロールを購入していました。けれども保管場所にいつも困っていたのです。考えてみたら6ロール入りでも良いはずです。もう一つはハミガキ。今まで予備に1本をストックしていました。でも現役のハミガキが万が一なくなったところで、家の中を探せば結構あるものです。たとえば携帯用に常に持ち歩いているハミガキセット。どうしても足りなくなったらこれを使えば良いのです。

片づけをしてみて思ったのは、今まであまりにも「当然」と思い込んでいた考え方を少しずらしてみるだけで、大いに変化が見られるということでした。こんまりさんが言うとおり、こうして片づけてみればリバウンドもしないのではと感じています。

(2011年6月20日)

【今週の一冊】

「ことばの教養」外山滋比古著 中公文庫 2008年

私にとって外山滋比古氏と言えば、日本語に関する著者というイメージが強いのだが、略歴を見たところ、「英語青年」の編集を長年務めたそうである。「英語青年」は非常に歴史のある雑誌であったが、数年前に惜しまれて休刊となってしまった。

本書は「ことば」をテーマに外山氏が綴ったエッセイが掲載されている。中でも興味深かったのは、著者の手紙に対する考えと辞書の使い方に関してである。外山氏はもっぱら「手紙派」で、すぐに返事を書くタイプ。私も手紙を書くのは好きなので、手紙を出したり受け取ったりする喜びに関する記述を本書で見つけた際には、同じような感情を抱いた。

一方、辞書に関してなるほどと思ったのが、「基本的な単語ほど引く」というくだり。通常辞書というのはわからない単語を調べるために使われる。けれどもそれではあまりにももったいない。知っている単語ほど引き直すべきだと出ていた。私自身、通訳学校で教えるに当たり、難しい文法書をひも解くよりもその単語を辞書で引いた方が案外早く理解できると学生たちには伝えている。よって、外山氏の主張も大いに納得のゆくものであった。

他にも原稿の書き方や本の読み方など、学習者に参考となるような文章がたくさんあった。言葉に興味がある人にはぜひ読んでほしい一冊。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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