第307回 プロセスそのものを楽しめるか
実は最近、色々と考えねばならないことがあり、頭の中がゴチャゴチャする状況が続きました。そのようなときはなかなかchallengingです。でも「時」というのはありがたいもので、結局は時間が解決してくれました。GWも明けましたので、あとはまたフルパワーで(もちろん、無理のない範囲で!)夏に向けて歩みたいと思います。
今回自分自身が疲弊してしまった原因を私なりに分析してみました。具体的には、日記のページを左右に分け、左側に「好きなこと・得意なこと」を、右ページには「嫌いなこと・苦手なこと」をどんどん思いつくままに記していきます。仕事に限らず、家事や日常的なことすべてを順不同で書いてみました。
その結果、自分の傾向が見えてきたのです。たとえばケーキ作りのように材料をきっちり量り、オーブンの時間を合わせて作り上げるというのは私好みです。しかし、残り物をチャチャッと合わせてテキトーに一品を作るというのは不得手なのですね。他にも「掃除・洗濯・洗濯物畳みは好き」ですが、「窓ふき・窓の桟の掃除」はニガテです。
苦手なものも数多くこなせばいつの間にか慣れて好きになる。そうした考えももちろんあります。私もそう言い聞かせて好きになろうと努力してきました。けれども理屈抜きで「どうしても得意になれないこと」は存在するのでしょうね。正直なところ、私にとっての食事作りがまさにそれです。家族の栄養を考えて、もちろんしっかりと作るよう心掛けています。けれどもケーキ作りのように材料を量るさなかからウキウキしたり、オーブンから取り出したときのような「やったぁ!できたあ!」という達成感を通常の料理の場面ではあまり抱くことができないのです。要は料理が苦手科目ということなのです。
これまでの私は「家庭を持った以上、料理も得意科目にせねば」と躍起になっていました。私の場合、性格的にきちんとさせたいという思いがあるため、それこそ「だしスティック」ではなく、こんぶや煮干しでだしをきちんととらねばというぐらい極端です。冷凍食品も日常の食卓に出すのははばかられると勝手にハードルを設けていました。手間と時間がかかるゆえ、ますます苦手意識克服への道のりを遠ざけていたのです。
ショートカットを自分に許すこと。そして何よりも「得意な人を探して助けてもらう」ということを自分に許すことこそ大切なのだと思います。せっかく我が家は4人家族で、それぞれ得意分野を持っているのです。私が苦手とする項目は、逆にそのプロセスに喜びを覚えて取り組んでくれる家族メンバーに頼む方がお互いの幸せなのですよね。しゃかりきになって一人で抱え込み、燃え尽きてしまうのはあまりにももったいない!嬉々として引き受けてくれる項目は周囲にお願いして、私自身が幸せ感を抱ける事柄に集中したいと感じます。
気分ダウンで家族にはメーワクのかけ通しとなりましたが、この教訓を得られたのは本当に良かったと思っています。
【今週の一冊】
「フェルメールからの手紙」 藤ひさし著、ランダムハウス講談社、2007年
世界中の美術ファンを魅了する画家フェルメール。生涯描いた作品はそう多くありません。有名な「牛乳を注ぐ女」や「天文学者」など、それぞれの絵画には多くの謎が秘められているようで、解説本もたくさん出ていますよね。
私もフェルメールが大好きで、美術展があれば出かけます。初めてその作品を観たのは幼少期に暮らしていたオランダ時代でした。また、学生時代にも短期留学でウィーンへ立ち寄った際、実際に鑑賞しています。ただその頃はさほど私の中でフェルメールが大きな存在ではありませんでした。それでも「実物を観られた」というのは、今にして思えば私にとって財産です。
今回ご紹介する一冊は映像作家・藤ひさしさんが記したものです。フェルメールの作品そのものの解説のほか、イラストや当時の時代考証などが紹介されています。中でも参考になったのは、各ページ右下にある年表でした。当時のフェルメールとオランダ、そして世界や日本、その頃の有名な絵画などが一覧になっているのです。カラーで色分けされているので、見やすくなっています。
フェルメールの妻・カタリーナは1675年の夫の死後も作品を手放さず努力を続けたそうです。しかし翌年には自己破産を申請、1677年には聖ルカ組合でフェルメールの作品は競売にかけられました。ちなみにその頃の日本と言えば江戸幕府が生類憐み令を発布したころです。
ところで今年から来年にかけて日本ではブリューゲルやゴッホの展覧会が開催されます。そちらも今から楽しみです。
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