INTERPRETATION

第240回 年末断捨離!

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

通訳者に必要なことはと尋ねられると、「語学力」「知識力」「体力」と私は答えています。英語と日本語を瞬時に言語変換できる実力はもちろんのこと、専門分野に対する深い知識に加えて幅広い教養も求められます。そしてそれ以上に大切なのがスタミナ!休養に運動、栄養を意識した食事を心がけるなど、「商品」としての自分を常に最善の状態に保つ必要があるのです。よって私にとってはスポーツクラブで体力づくりに励むことも仕事の一部となっています。

仕事を請け負う際には、なるべく運動を犠牲にせずにスケジュールを組むようにします。ところが年末や年度末になるとどんどん仕事が舞い込みます。あ、ちなみに日本の「年度末」は3月ですよね。英語で「年度」はfiscal year。「カレンダー年」と混同しないように訳すことも現場では大切です。

今年の12月はこの原稿を書いている現在でも例年以上にバタバタしています。指導先で試験を実施したり、何か所からの原稿依頼があったり、通訳業務であちこちに出かけたりという具合です。手帳に書き込んでいたスポーツクラブ行きも泣く泣く行かずじまいになってしまいました。

そのようなときは早朝にウォーキングもかねて年賀状を出しに行き、少し大回りしてみます。仕事に出かけるときも2駅先まで歩くなどして、運動できなかった分を穴埋めするようにしています。年賀状は今から一日数枚ずつでも書いておくと、年末になって慌てずに済むのですね。早め早めに物事に取り組みたいと思っています。

さて、こうして何とか運動不足解消と体力アップを工夫してはいるのですが、先日、究極の(?)運動を実践しました。カロリー的にどうかはさておき、こまめにあちこち動けるのが「断捨離」、そう、「片づけ」です。

私は元々片づけが好きで、子どもの頃はよくラジオを聴きながら整理整頓していました。ポップスやロックが流れているとリズムに乗って片づけもはかどるのですね。ところが最近は何事も「締め切り順に手がける」を実行しようとする分、どうしても「掃除や片づけ」より「仕事」が優先していたのでした。

幸い先日は懸案の原稿が納品できたので、思い切って片づけをすることにしました。ポイントは「気になるところからやること」「完璧を目指しすぎないこと」「少しでも不用品を処分できればOK」というルールを設けたことです。

特に重点的に行ったのが自分のクローゼットでした。というのも、扉を開けるたびに数年前に購入したスカートが目に入るのですが、何となく好みではなく、ずっと処分しようかどうしようか迷っていたのですね。それまでずっと身につけることもなく来ていましたので、今回思い切って処分しました。

大物を一つ手放すと、俄然気持ちも大きくなります。小さなものを処分するよりも、懸案だったものとサヨナラするだけでそこから片づけは大幅にはかどりました。

その勢いで家じゅうの片づけをしていたところ、キッチンの上の棚に正体不明の袋がありました。よく見ると自分の字で「2015年中一度も使わなかったら処分!」と太字で書いたメモが貼ってあります。おそらく食器だと思うのですが、もし12か月間一切取り出さなければ処分しようと1年前に考えていたのですね。

ここで開封してノスタルジアに浸ってしまっては逆戻りしてしまいます。ですので「えいっ!」とそのまま処分箱へ直行させました。ちなみに我が家の近所にはチャリティーショップがあり、不用品を引き取ってくれます。まだ使えるものはそちらに寄贈することにしています。

このようにして書籍や雑貨、洋服などずいぶん手放すことができました。ゴミも大量に出ています。あとは年末の大掃除に向けて少しずつ準備するばかりです。

【今週の一冊】

「大人が楽しい紙ペンゲーム30選」 すごろくや著、スモール出版、2012年

子どもたちが幼いころ、どうしてもゲーム機が欲しいと言ったことがありました。お友達も持っているし、ゲームをやりたいというのが理由です。我が家は夫婦の間で「ゲームや携帯は自分で判断力がつくまで持たせない」という方針を決めていましたので、子どもたちが主張した時も理由を丁寧に説明してあえて買うことはしませんでした。もちろんバトルはありましたが、最終的には「電子ゲームのない家」ということで納得してくれたようです。

その分、ボードゲームや外遊びに必要な道具などは状況が許す限り買ってきました。これなら親子でも遊べますし、「人生ゲーム」などのボードゲームは親にとっても懐かしいですよね。普段の日も夕食後に遊んだり、お客様がいらしたときは子ども同士で遊んだりと楽しんでいます。

今回ご紹介する本は、紙とペンさえあれば遊べるゲームが紹介されています。私は昔「いつ・どこで・誰が・何をした」という遊びをしたことがありますが、本書には30個ものゲームが色々と出ています。

中でもおすすめしたいのが「たほいや」という辞書遊びゲーム。数名でグループを作り、一人の出題者が辞書の中から珍しい単語を読み上げます。残りのメンバーは音の響きから想像してその言葉の意味を「辞書の定義風」に紙に書きます。次に出題者が辞書に書かれている語義と各自の定義を読み上げ、皆に正解を予想してもらいます。以前テレビでもやっていたそうですので、覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「たほいや」では広辞苑を使いますが、我が家は英和辞典でこれをやったところ、聞いたこともないような発音の英単語に盛り上がりました。これから年末年始、家族やお友達が集まる時期ですよね。本書のゲームで頭を使うのも楽しいのではと思います。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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