第179回 洋書の読み方
仕事では英語に携わっているものの、読む本は圧倒的に日本語文献の方が私の場合多くなっています。これは母語で素早く情報を取り入れ、知識として定着させたいからです。新聞を読むときもまずは日本語新聞に目を通してから英字新聞へと移っています。
大量の英語文献を本格的に読むことになったのは、大学院に留学中のときでした。
授業初日に渡されるのは、そのコースのシラバス。参考文献がたくさん紹介されており、授業の各回で使用する文献リストも別途あります。初回授業時のこと。クラスが終わり、のんびり学食で昼食をとった後、私は文献リストの本を借りに図書館に行きました。
ところがクラスメートたちは授業直後にすでに本を探しに行っていたのです。私が図書館に到着したときには、すでにすべての本が貸し出されたあとでした。そのとき初めて、学問に対する真剣な大学院生の様子を目の当たりにしたのです。結局、必要な本は自腹で買うことになり、書籍が高額なイギリスにおいて、しかも貧乏学生だった私にとっては痛手でした。
当時はまだ英語文献を大量に読むことに慣れておらず、1ページ目のintroductionから読み進めるような状況でした。シラバスには指定ページが書かれていますが、いきなりそこから読んでも今一つ内容がつかめません。それで仕方なく最初から目を通していたのです。日本語と異なり、英語はアルファベットの羅列なので、漢字だけ拾い読みというわけにもいきません。徹夜をする日々が続き、そのせいで集中力が落ち、体調も崩してしまったのでした。「要領よく読むこと」を体得することも研究者には必要です。大学院というのは将来の研究者を養成する場所でもあります。そのことを院生たちに学ばせるのが意図だったのかもしれません。
さて、話を今回のタイトルに移しましょう。「洋書の読み方」についてです。今は大学院のような課題があるわけではありませんので、もっぱら「自分流」に読んでいます。具体的には以下のような手順で読み進めています。
1.表紙・裏表紙・カバーのそでに書かれている情報をまずは読む
ここには本の概要がコンパクトにまとめられています。著者が何をこの本で訴えたいのかのポイントがありますので、大局観的につかむことができます。
2.目次を確認する
目次にはどの章が何ページから始まるかが記されています。私はそのページを開き、ページの右端を折っていきます。こうして本を閉じると右端だけが折れた状態になり、「この章はこれぐらいの厚さ」とページの量で確認できますよね。読むスピードを一定に保ちながら一気に読みたいので、あえてこのようにしています。ちなみにジャーナリストの千葉敦子さんは本を読むとき「相当のスピードで斜め読みする」「どんなに大枚をはたいてもつまらなければ読むのをやめる」と記しています。私たちの時間は有限ですので、興味のない本をダラダラと読み続けるのは時間がもったいないですよね。私も一冊を入手したら、なるべく早く、たとえ斜め読みでも良いので読破したいと考えます。
3.何をこの本から知りたいかを頭の中に描きながら読み始める
その本を入手したのは、何かを自分なりに知りたいという欲求があったからです。ですので、本を読む際には、頭の中にある自分のテーマをしっかりと描きながら、そのテーマに近い文章やキーワードを拾い読みするようにします。一字一句読むには時間がかかりますが、自分のテーマさえ決まっていれば、ざっと眺めるだけでもそれに関連した語が飛び込んでくるのです。最初のうちは難しいのですが、完璧を求めすぎずに「とにかくざっと拾って早く読了する」ことを目標にすると、負担を感じずにページをめくることができます。ちなみに英語の場合、固有名詞は大文字ですので、「大文字さがし」をするのも良いかもしれません。
4.最終ページまで到達したら、索引をチェックする
英語文献の場合、索引が非常に充実しています。アルファベット順に単語が網羅されているので、私はすべてに目を通し、興味のある語に印をつけていきます。本文を読む際にも気になる箇所には下線を引いたり、ページの端を折ったりいるのですが、あえてここでもう一度索引を読むことで、内容の再確認を行います。索引をチェックしたら、印の付いた箇所のページをもう一度ひとつずつ開きながら、本文を読みなおします。
5.読書ノートはつけない
かつて私は「読書ノート」をつけていました。読んだ本の感想や引用などをノートに記していったのです。今でも印象に残った本については記録をつけていますが、すべての本で行うことはやめました。それは、ノートに記している時間がもったいないからです。どうしても記録しておきたいという本のみ厳選し、感想を綴っています。
いかがでしたか?こうしてみるとかなり乱暴(?)とも言える読み方かもしれません。けれどもスピーディーに読み進めることで、本を買った当時のワクワク感があるまま読了できますので、最近はもっぱらこの方法で読み進めています。
洋書というのは人によってはハードルを感じるかもしれませんが、完璧を求めず、楽しく読むことが何よりも多くの喜びをもたらしてくれると思います。
(2014年9月8日)
「キャビンアテンダント5000人の24時間美しさが続くきれいの手抜き」清水裕美子著、青春出版社、2014年
独身の頃は海外旅行や出張など、飛行機に乗る機会が多かった。子どもたちが生まれてからはもっぱら国内生活である。今は放送通訳がメインなので、海外業務も少ない。搭乗するのは年1回の帰省時ぐらいである。
昔から飛行機は大好きなので、今でも搭乗の数日前から気分はどんどん高まる。空港の雰囲気、機内に入ったときの空気など、飛行機に乗るときにしか味わえない。それだけに、年1回の搭乗をとことん楽しみたいと思う。
今回ご紹介する本は、元キャビンアテンダント(CA)が記したメイクに関する本。先日乗った機内でCAの方々がにこやかに、そして優雅にしていらしたのを見て、どのような訓練や心構えを学んできたのだろうと疑問に思った。それが本書の購入きっかけである。
内容は主にメイクに関するものだが、限られた時間内でいかに効率的に作業をするかという時間管理面での発見も大きかった。たとえば朝のメイクの際は、必要な化粧品や道具をずらりと並べてから取りかかるという下り。つい私たちは「棚から化粧品を取り出す」「顔につける」「終わったらボトルを棚に戻す」という作業を繰り返している。けれども著者の清水氏によれば、「両手を使って」「一気に取り出し」「すべて終わったら両手で戻す」だけで大いに時間を節約できるのだそうだ。早速実践してみたところ、今まで片手で一つ一つ取り組んでいたことを両手で行ってみると時短になることがわかった。
他にも、一つの作業をする際、「ついでにできること」があるかどうかを考えると記されていた。これは普段の日常生活でも応用できそうだ。もっとも私の場合、「ついでの作業」が「本格的に取り組む作業」に代る可能性もある。自分の中で本来の目的を意識しつつ、できる範囲で「ついで作業をする」ことも大切だと思った。
メイクだけでなく、姿勢や振る舞い方、マナーなど色々と学ぶことが多い一冊。
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