第667回 習慣づけ、あれこれ
あっという間にもう1月下旬!松の内が明けるや「恵方巻」チラシでびっくりしていたのが、今やバレンタイン一色。季節行事だけで目が回りそうです。
さて、みなさんは「一年の計」を立てるタイプですか?私は幼い頃こそ目標を立てていました。が、最近はさっぱりです。何しろ短期記憶が弱いことを自覚しているため、長期目標など立ててもあっという間に忘れてしまうからです。ちなみに短期記憶、どれぐらい欠落しているかと言いますと、このような感じ:
CNNの同時通訳現場。キャスターがCM後のニュース内容を告知
↓
CM突入。ネットでそれを予習しようとキーボードに手を置く
↓
「あれ?この後、何のニュースって言ってたっけ?」
このような具合です。わずか数秒前のことを忘れているのですよね。でも同僚に話すと皆、口をそろえて「ある、ある!!」と賛同。そんな職業です。
さて、今日のタイトルは「習慣づけ」。私の場合、目標立案はあきらめている一方、「毎日の積み重ね=習慣化」には興味があります。よく「三日坊主」と言われますが、逆の見方をすれば「三日続いたなら、さらなる継続への期待大」と私は思うのですね。そこで、昨年末から現在にかけての「習慣づけ」をご紹介します。
1 読書の習慣化
20代前半の頃、私は同時通訳者・松本道弘先生の私塾「弘道館」に通っていました。仲間と当時掲げた目標が「1年で100冊読破」。目標を宣言して一緒に始めると、お互い良い意味でのライバル意識が生まれます。おかげで程なくして二人とも100冊を読み遂げたのでした。
しかし、スマホ全盛期の今、私の読書ペースは落ちるばかり。特に夕食後など頭がボーっとして書籍よりスマホをつい手に取ってしまいます。実り多きサイトを見るのではなく、何となくの暇つぶしです。このままではいけない、と思いました。
そこで久しぶりに「1年で100冊読破」目標を設定。ただし、熟読ではなく斜め読みも良しとしました。日々の手帳に「1/99」という数字を記入して、読んだ本を記録します。この数字の意味は「1冊目読破/残り99冊」という意味。現在「37/63」(37冊読破、あと63冊)まで来ています。数字が励みになっています。
2 ついついの「クセ」も数字で撃退
私は冬になると乾燥でかゆみが発生しやすい体質です。それでついつい引っ掻いてしまうのですね。若い頃は掻きすぎても皮膚はすぐに再生していました。が、最近は痕が残ってしまうのです。そこでこの悪しきクセも上記「1」同様の数字記入でやめるよう習慣づけています。こちらは3日継続をまずは目標に。「掻かない 1/3」と手帳に記し、かゆみを感じたら「掻く」のではなく、「優しく幹部を叩く」で対応しています。3日続いてもまだまだクセが残っているようなら、延長戦も考え中。
3 記録する
私は紙の手帳に日々の「やることリスト」を列記しており、読書も仕事もすべて書いています。書き方は「□原稿執筆」という具合で「□」を作り、完了したら「✔」を入れるというもの。一日の終わりに全項目が「☑」となることは滅多にありません。でも、過去のページをめくって振り返ってみると、「うん、よく頑張った」と励みになります。習慣づけ項目も記録することで、継続につながると思っています。
いかがでしたか?継続は日々の積み重ねに尽きます。もしお休みしたり守れなかったりしても、そこからまた戻れば良いのですよね。ちなみにこのコラムタイトルに毎回掲げてある「第~回」という数字、これも私には大いなるモチベーション。先週の「第666回」で「ぞろ目だ!言及せねば」と思いつつ失念。次は連番「第678回」を意識したいです!
(2025年1月28日)
【今週の一冊】
「絶滅危惧職種図鑑」七里信一著、あさ出版、2018年
先週1月21日未明、私は民放局でトランプ大統領就任式の同時通訳をする機会を頂きました。4年に一回のアメリカ大統領選や就任式は世界が注目しますよね。日本でも複数のテレビ局が同時中継をしました。
ただ、近年との大きな違い。それは「字幕通訳ソフト」の導入です。局によっては通訳者の肉声はありませんでした。代わりに音声識別ソフトが英語を解釈し、即座に日本語に変換。漢字字幕にしていくのです。機械はヒトと異なり、無限大に単語や文法を蓄積できます。かつては実証試験的な位置づけだった字幕通訳。これがもはや少しずつ市民権を得ているのですよね。
そこで今日ご紹介したいのがこちらの本。表紙右上には「これからなくなる厳選65種」。表紙をめくると「絶滅するには理由(わけ)がある!」と書かれています。
本書では絶滅する理由を6つに分けています。「AIの発達」「新技術の登場」「ネット販売の普及」「道具の進化」「生活習慣の変化」および「個人の繋がり」(=仲介者なくてもできる、という意味)です。
で、通訳者は?ハイ、しっかり含まれていました。絶滅理由は「道具の進化」。今後はビッグデータとしての通訳データが蓄積され、さらに正確な通訳が可能になる、と著者は説きます。いずれは世界中の言語が通訳できる機械が誕生し、「国が力を入れる英語教育が必要なくなる日も近い」(p67)とのこと。確かにそうなるのかもしれません。
でも、一律で通訳がいなくなるかと問われれば、私の答えは「ノー」です。昨今のレトロブームでカセットテープやカメラは再度人気を見せています。倒産するとさえ囁かれたレコード針製造会社も生き残っています。つまり、流行も仕事も、振り子のようにいずれは戻ってくると私は思うのですね。
そう私自身が考えるようになった背景は、バブル時代にさかのぼります。当時はお金を払ってブランド品を買う時代。女子学生はスカートにパンプスが主流で、ジーンズにスニーカーなどあり得ませんでした。土いじりやガーデニングなど、手を泥だらけにすることから正反対の社会だったのです。でも私はその頃「いずれお金メインの時代が終わり、市民農園などが流行するのでは?」と冗談交じりに周囲に話していたのです。本当にそうなりました。以来、「物事は循環する・回帰する」と思うようになったのです。
本書では他にも「書店員」「薬剤師」「スポーツ審判」など多数の仕事が絶滅すると描かれています。確かに技術進歩でそういう傾向にはなるでしょう。でも、やみくもに心配するのではなく、「それでも生き残るために何ができるか」を考え続ける。知恵の駆使こそ、「ヒト」と「個性」の出番であると思います。
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