第639回 “So What? Now What?”
地球温暖化ゆえなのか、昔と比べて天候も極端になりましたよね。今年は関東でなかなか梅雨入り宣言が出されず、かと思うと5月の時点で急激に暑くなったり、まるで台風のような豪雨になったりなど、体もそのような気候についていくので精一杯になります。人間の心身は機械ではありませんので、疲労感やモチベーションをコントロールできないこともあります。それが普通です。でも、周りにエネルギッシュな人がいたり、あるいはそのような自己啓発本やSNSなどを目にしてしまったりすると、自分の不甲斐なさが感じられることもあるのですよね。
人は生まれてから「人生の終わりの日」までを歩み続けるわけですので、誰にとっても時間は平等であり、老いはやって来ます。振り返ってみると私の場合、高校時代は定期試験の前に徹夜しながら一夜漬けなどよくやりましたし、新卒で入った会社では、入社直後に同期と毎晩飲み会で終電ということがありました。一方、大事な会議日の朝に40度近い高熱を出し、解熱剤と気合だけで夕方には元気になっていた、などということもあります。とにかく若かった、の一言につきます。
あれからずいぶん年月が経ち、こうした気候変動もあってか、昔のような馬力は叶わなくなっています。そのような際、「過去の体力全盛期」と「現状」を比べたところで、物事が解決できるわけではありません。ではどうするか?対処法を考えるのが一番、と私は考えています。
そこで私が取り組んだのが、自分の心身状態をノートに書き留める、というもの。頭の中であれこれ考えていても堂々巡りになりがちですので、自分で客観的に把握するためにも、あえてノートに手書きで記すことにしたのですね。綺麗に書く必要はありません。自分が読めればOKです。
方法としては、「疲労要因となった出来事」を書き出します。ある日のノートはこのような感じです:
*とにかく今日はぐったりだ
*今日は暑かった
*午後にクリーム入りどら焼きを食べたら胸やけ
*仕事を終えたら足がむくんでいた
このようにしてひたすら「疲労要素」を列記していくのです。書き出してみると、それでも頑張った自分がいたことに気づかされもします。
ここまで書き連ねたら、各項目の横に矢印(→)を書き、「では、どうする?」と考えてみます。先の例で言うと:
*とにかく今日はぐったりだ→早く寝る!
*今日は暑かった→水分補給。エアコンをケチらずにON
*午後にクリーム入りどら焼きを食べたら胸やけ→胃薬を飲む。次回は半分だけ食べる
*仕事を終えたら足がむくんでいた→足裏やふくらはぎのマッサージをする
このような感じです。要は、「起きたことは起きたこと」として受け止め、「自分が今および将来できること」を考えるのですね。上記の「→」の後に書いたことはすべて「自分が取ることのできる最善策」ということになります。
ところで私が好きなTED TalkにLinda Cliatt-Wayman氏の”How to fix a broken school?”があります。氏はアメリカ・フィラデルフィア州で崩壊寸前の学校の校長として赴任。動画では、どのようにして学校を立て直したかを話しています。その中に出てくる言葉が、
“So what? Now what?”
です。起きたことを受け入れ、そこから何ができるかを考えて、氏は学校を大きく飛躍させたのでした。私はこのフレーズが好きで、日常生活に取り入れています。今回ご紹介したノート法もその一つ。良かったら試してみてくださいね。
(2024年6月25日)
【今週の一冊】
「世界はラテン語でできている」(ラテン語さん著、SB新書、2024年)
現在出講している大学で教え始めて間もない頃のこと。「英語の紙辞書が大好き」と述べていた学生さんがいました。特に「語源」に魅了されていたそうで、英語の多くがラテン語由来であることに興味を抱いたそうです。第二外国語もラテン語を履修していました。
私自身、英語の語源を調べるのが好きで、電子辞書でも必ずチェックするようにしています。数年前には水道橋にあるアテネ・フランセの夏期講座でラテン語を学びました。今の時代、世界を見渡してもラテン語を母語とする人はいませんが、英語を学ぶ上でラテン語を知っておくことはとてもためになります。
そこで今回ご紹介したいのが本書です。著者は「ラテン語さん」というハンドルネームでSNSを続けている方です。本書の特徴は、様々な英語をラテン語の観点から分析しているのはもちろんのこと、日本でも有名な商品や企業などの固有名詞まで調べてわかりやすく解説されていることです。
ちなみにフィンランドのラジオ局Yleはラテン語ニュースサイト(nuntiilatini.com)を運営しているそうです。覗いてみたところ、確かに単語はすべてアルファベットではあるものの、全く解読できません。そんなラテン語の世界にますます惹かれます。
巻末のヤマザキマリさんとの対談も読みごたえ大。200ページほどで大いに充実している一冊です。
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