INTERPRETATION

第146回 目の前のことを丁寧に

柴原早苗

通訳者のひよこたちへ

あけましておめでとうございます。いつも本コラムをお読みくださりありがとうございます。今年も読者のみなさまにとって少しでもお役にたてるような文章を綴ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年の年初に本コラムでは「2013年にめざしたいこと」と題して書きました。第99回の文章です。

https://www.hicareer.jp/inter/hiyoko/992013.html

このときも前年の目標を振り返りましたので、今回も2013年に掲げた内容を省みることにします。昨年の3つの目標は以下の通りです:

1.古典を読む

2.すぐやる、必ずやる、面倒がらない

3.冷静に

さて、実際はどうだったでしょうか?「古典を読む」に関しては完全に落第点です。授業でシェイクスピアを取り上げたときに概要を斜め読みしたこと、また、独学中のフランス語教材に出てきた名作を読んだぐらいです。教え子たちには「古典は大事」と唱えておきながら、本人がこの始末・・・。でもめげずに細々と取り組みたいと思います。

2点目の「すぐやる、必ずやる、面倒がらない」については、年末にようやくその仕組みが自分の中で確立された感があります。要は習慣化するまでが私の場合時間がかかるのですね。「やらなくちゃ」と思ったらとにかく席を立つ、「最後までやろう」と思ったら終わるまで手から離さないなど、自分なりの工夫が徐々に実ってきたように思います。ただし無意識でできるようになったわけではありませんので、注意が要りそうです。

最後の「冷静に」ですが、私の場合、公私で異なるように思います。むしろクールでいられるのは仕事のときです。同時通訳の場合、瞬時に訳語を考えますので、良い意味での達観が求められるのでしょう。それゆえにかえって冷静でいられるのかもしれません。その分、プライベートでは選択肢が多い分、慌ててしまうと自己分析しています。公私共々落ち着きを持ちたいと思います。

では今年の目標です。今後12か月間意識したいのはただ1つ。

「目の前のことを丁寧に」

これだけです。私の場合、慌ただしいと注意力散漫になってしまい、何事も中途半端で終わってしまうのです。壮大な目標よりも、目の前のことをただただ丁寧に取り組む。それを積み重ねて行けば、きっと道は開けてくる。あれこれ欲を出さずに地道に歩んでいく。そんな1年をめざしたいと思います。

みなさまにとって今年も実り多き年となりますようお祈りしています。今年も一緒に歩んでいきましょう!

(2014年1月6日)

【今週の一冊】

「NHK『あさイチ』スーパー主婦の直伝スゴ技!」伊豫部紀子著、新潮社、2012年

今年初めにご紹介するのはズバリ、元気になれる本!NHKの番組で紹介された内容が書籍化された一冊だ。実はこの本との出会いも偶然だった。日経新聞夕刊の書籍紹介ページに新潮社がレシピ本を刊行したと出ていた。新潮社と言えば文芸書がメインで料理本は珍しい。面白いなあと思ってその本をネットで検索したところ、関連本で出てきたのが本書。合わせて両方を購入した。

当のNHK番組は見たことがないのだが、本書には家事関連についてたくさんのヒントが詰まっている。私は昨年暮れにこの本をひもといたおかげで、大掃除がとても楽になった。いくつかご紹介したい。

1.片づけのヒント:

「全部出す→不用品を処分→置き場所を決めてそこに戻す」を守る。ポイントは「いったんすべてを取り出して、要不要を分ける」という点。

2.ストックはギリギリになるまで買わない:

買ってきても置き場がなければあふれてしまう。調味料でさえ「残り3ミリくらいになったら買う」という考えは圧巻。

3.やるべきことを一つ一つ終わらせる:

「あれをやりつつこちらをやって」となると無駄な動きが生じてしまう。一つの作業を終わらせれば「完了させた」という達成感が生まれ、次へのモチベーションになる。

さらにもう一つ励みになったこと。それは「暮らしていれば家の中は汚れる」という点。大事なのは「一定以上のキレイな状態に、いつでも楽に戻せるシステム」を作ることなのだ。そのヒントを本書からたくさん得られて嬉しく思う。

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記事を書いた人

柴原早苗

放送通訳者。獨協大学およびアイ・エス・エス・インスティテュート講師。
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言の同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも執筆中。

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